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「ターミナル」~漂うシリアス感、でも実はコメディ

アメリカの空港に到着するも、自分の国の政府がクーデターによって消滅し、パスポートが無効となってしまった男。入国も許されず、国にも帰れない。ターミナルにとどまるしかなくなった彼の実直さが、やがて周囲の人の意識を変えてゆく様子が微笑ましい。(2004年)
おすすめ度★★★

あらすじ

クーデターによって祖国が消滅してしまったヨーロッパのクラコウジア人、ビクター・ナボルスキー(トム・ハンクス)は、アメリカの空港にて足止めを余儀なくされる。その足止めの期間は数か月にもおよび……。

シネマトゥデイよりhttps://www.cinematoday.jp/index.html

「キャスト・アウェイ」では飛行機事故で無人島生活、「ハドソン川の奇跡」では墜落機の機長、この「ターミナル」では空港勾留・・・と、飛行機がらみの受難役俳優(?)といえばトム・ハンクス。

映画のキャッチコピー「彼は空港で待ち続けた。約束を果たすために・・・」に漂うシリアス感や、トム・ハンクスが泣いている宣材写真にだまされる人が多いであろうこの作品。

いやいやいや、これ、コメディですから!!

なんでこんなシリアスな雰囲気の路線で出しちゃったんだろ。

離陸後に祖国がクーデターで崩壊、アメリカに到着するもパスポート無効で入国不可、帰国もできない。

亡命など、他の入国要件のどれにも該当せず、まさに法のすき間に落ちてしまった主人公、ビクター・ナボルスキー(トム・ハンクス)。彼は空港を出ることを禁じられ、乗り継ぎロビーエリアで過ごす日々を送ることになります。

この出だしを聞くとやはりシリアスドラマかと思いがちですが、ここから彼が空港で生きていくために実直に奮闘する様子が面白い。

小さな工夫を重ねて小銭を手に入れ、友人ができ、仕事を得て空港暮らしがステップアップしていく様子は、なんだか『わらしべ長者』のよう。

彼を厄介者扱いする局長の嫌がらせに遭いつつも、実直で優しいビクターは、やがて空港で働くスタッフに受け入れられてゆくのです。

全体的にコメディタッチでほのぼのしたストーリーではあるのですが、気になるところも。

中国人の団体が偽造パスポート集団だったり、清掃や作業員などの仕事をしているのがみな移民系の人種だったり、東欧の客が薬品の持ち出しでトラブったりと、アジアやインド、南米、東欧等への偏見や差別を感じてしまう描写が目立ちます。

空港内でも底辺とも言える仕事環境にいる者同士の連帯感もあり、ビクターが助けられてゆく展開なのですが、描き方がややステレオタイプ。

そしてビクターが持っている大きなピーナツ缶、中身は「約束」が入っているという。すごく意味深な割に、判明してみるとその内容もちょっと肩透かしというか、約束を果たす様子もあっさりとした描写で終わり。

キャサリン・ゼタ=ジョーンズ演じるCAはさすがに美人で華があったけど、一番好きな男は既婚で不倫状態なだけでなく、フライト到着地ごとにたくさんの男がいて連絡がひっきりなしという、男依存症みたいな女。

なのに、地味で実直なビクターが彼女を好きになるんですね。

彼女を食事に誘う作戦を空港スタッフ仲間が手伝うくだりは微笑ましかったけど(インド人清掃員グプタのジャグリングは吹いた)、結局彼女が真の愛情に目覚めてビクターと結ばれるとかの展開にも至らず、このロマンスも中途半端に終わってしまう。

逆にビクターが恋のキューピッド役を務めるエピソードも、かなり無理がある。誰だか不明の相手からアピールが続いて最後には指輪が届くプロポーズって、普通に怖いわ!(それでOKして結婚しちゃうのも理解不能)

他にも勝手に空港内を改装工事をしちゃったりとかツッコミどころはいろいろ。

コメディをベースにロマンスとヒューマンの色合いを足してみました、という感じなので、ガツンとした味わいはありませんが、気合を入れなくても観ていられて疲れない、メンタルエコな作品です。

渡る世間に鬼は無し的教訓:
 工夫と努力と情熱があれば
 協力者は必ず現れる

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