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「殿、利息でござる!」~私欲を捨てた庶民の心意気に涙する

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困窮した宿場町で、苦しむ住民を救おうと立ち上がる男たちの心意気に泣けてくる。しかも実話。(2016)
おすすめ度★★★★★

あらすじ

江戸中期、財政の逼迫(ひっぱく)した仙台藩が領民へ重税を課したことで破産や夜逃げが続出し、小さな宿場町・吉岡宿は困窮し切っていた。このままではダメだと考える商人・穀田屋十三郎(阿部サダヲ)と同志たちは、藩に金を貸し付け毎年の利息を住民に配る「宿場救済計画」を考えつく。町の存続を図るため、前代未聞の金貸し事業を成功させるべく、彼らは私財を投げ打ち……。

シネマトゥディより

「超高速!参勤交代」みたいなコメディ時代劇だと思いこんでいましたが、いい意味で裏切られました。銭がちょんまげになってる阿部サダヲの写真にしろ、劇場予告編の軽いノリにしろ、ドタバタ系コメディだとばかり思っていたわけです。

仙台藩直轄ではないのに、藩からの重い税と労役に苦しんでいた宿場町・吉岡宿。初めて聞く言葉でしたが、「伝馬役(てんまやく)」という役割を藩から課されており、それは、お上の物資を、隣の宿場から次の宿場へと受け渡す労役のこと。しかも、そのための馬や人足等、経費はすべて宿場町の持ち出しという不条理なもの。

その荷運びのための馬を買う費用や維持費もままならず、困窮の末、夜逃げで人口が減り、残った住民の負担がさらに大きくなるという悪循環に陥った吉岡宿。

その吉岡宿で造り酒屋と質屋を営む浅野屋は、先代の甚内(山崎努)、名を継いだ次男の甚内(妻夫木聡)とも、ケチで有名でした。長男の十三郎(阿部サダヲ)は幼いころ穀田屋という他の造り酒屋に養子に出されており、自身のことを親に捨てられたように思っています。優秀な弟を家に残し、自分は放出されたのだと。

吉岡宿の困窮がいよいよ極まり、十三郎(阿部サダヲ)は命を捨ててでもお上に嘆願をしようとしますが、町一番の知恵者・菅原屋篤平治(瑛太)に止められます。そして代わりに篤平治は、とんでもない策を提案します。

藩主・伊達重村は官位昇進のため、江戸の老中に金品を贈ったり、幕府によるいわゆる公共工事に出資したりして金欠状態。そんな、金が欲しい仙台藩に対し吉岡宿が千両(現代の貨幣価値にして約3億円)を貸し付け、その利息を町の運営費に充てようというわけです。搾取されているお上から逆に金を得ようという、ありえない逆転の発想。

しかしすでに貧乏な吉岡宿で、千両もの資金がそう簡単に集まるわけがない。中心となった9人は、必死にお金をかき集めます。質素倹約をし私財を売り、家族を奉公に出したりと、手を尽くすこと8年。ようやく千両を集め、お役人を通じ千両の貸し付け案をお上へ!ところが・・・。

萱場杢(かやば もく/松田龍平)という冷酷な出入司(財政担当役人)は、即却下。はてさて十三郎たちは吉岡宿を救うことができるのか。

再度のお上への願い出や、その後の交換条件等、道のりは平坦ではありません。そしてその過程で明らかになる、浅野屋甚内の悲願。守銭奴と噂されていた親子の本当の目的は? なぜ2代に渡り40年も必死でお金をためてきたのか。

そして家から追い出されたと思っていた十三郎に対する、父甚内と弟の、深い愛情。親子2代に渡る悲願と滅私の心に泣かされます。最後にお殿様が甚内のところへわざわざ自ら訪ねてくるくだりも、心地よい爽快感。お殿様役はなんとフュギュアスケートの羽生結弦くん!仙台つながりの特別出演でしょうか。王子様っぽいイメージが若殿様にマッチしてて良かったです。

町のため私財を投げ打った9人の男たちですが、なんとさらに「つつしみの掟(おきて)」を定め、この策の出資者であることや金額を口外しないよう言い渡します。それだけならまだしも、「神社仏閣への寄進では名前を出さない」「道は端を歩く」「宴会では上座に座らず」など、偉そうにしたり勘違いしたりしないよう、厳しく律することを定めたのでした。

この教えが子々孫々守られてきたため、この話は歴史の中に埋もれていたとのこと。いや、いくらなんでもつつしみ過ぎですって!!

一方、十分リッチにもかかわらず更にタックスヘイブンまで悪用して私財をため込もうとする世界の富裕層を思うと、ぜひともこの9人の爪の垢でも煎じて飲んでいただきたいと、ため息が出てしまった次第でした。

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