スポンサーリンク

「亜人」~不死者同士の死闘に決着は付くのか!?(ネタバレあり)

不死の身体を持つ、「亜人」と呼ばれる人たち。保護という名目で拘束され、死と再生の人体実験を繰り返された彼らが、クーデターによる大量殺人を開始する。「死なない」彼らの殺戮を、止めることはできるのか。(2017年)
おすすめ度★★★

あらすじ

2017年の東京。研修医の永井圭(佐藤健)はトラックと衝突し死亡するが、その直後、肉体が回復し生還。不死身の新人類“亜人”であることが発覚する。圭は追われる身となり、亜人研究施設に監禁されるが、“帽子”と呼ばれる亜人のテロリスト・佐藤に助けられる。しかし、佐藤は国家転覆計画に加担しない圭を敵視。圭は佐藤の暴走を止めるために立ち上がる。

シネマトゥデイより

映画化の話が出る前から原作漫画を読んでいましたが、CGによる実写に向いてる作品だろうなあと思っていたので、実写化への抵抗感は特にない状態で鑑賞。

ここから先の話はネタバレにあたるエピソードを含みますので、未見の方はご注意ください。




主人公の亜人・永井圭と敵の亜人・佐藤の人物像や年齢設定に改変が加えられています。キャラやストーリー設定が原作と変わることはよくあることなんですが、この改変、主演を佐藤健にするためにわざわざ26歳の医学生なんて設定にしたんじゃ・・・? 

キャスティングの都合優先で改変するのは、なんか順序が逆な感じがしてちょっと嫌。今回がそうなのかはわからないですが。

原作での圭は高校生で、10代っぽい対人感覚や愛想の無さとかもストーリー展開上重要に感じていたので、この改変はちょっとモヤモヤします。

しかも、「必死に勉強して医学部入ったのに、(亜人と判明して追われる身となり)人生設計がパーだ」みたいにボヤくシーンがあるんですが・・・。そんな勉強ばっかやってた人が、なぜか銃を扱えるのはもちろん、亜人・佐藤とのバトルでは完全に格闘家なみのアクションっぷり。どんな武闘派医学生なんだよ。

原作の佐藤は米軍に在籍経験があり、戦闘能力を身に着けているのも理解できますが、実写ではそういった背景は描かれていません。まあ、それは設定次第なので省かれていてもいいかなとまだ思えるんですが。

一番ひっかかるのは、亜人・佐藤がテロを起こして人を殺しまくる理由でしょうか。

原作では、幼い頃から無邪気に小動物を惨殺したりと、生まれつきのサイコであることがわかっています。殺すことそのものが楽しいのです。実写では、亜人として実験台にされ続けた恨みがあり、復讐が理由として描かれています。快楽殺人という理由では、倫理的にまずいと思ったの?

その割には実に楽しそうに殺しまくる佐藤。そんな楽しそうなら、原作どおりにサイコに徹して描いたほうが良かったのでは。

亜人はいわゆる「不死」の身体のため、頭を撃ち抜いても手足を切っても死なず、再生します。拘束されて、研究所で何度も脚や腕を切り落とす実験をされるシーンもあり、「残酷系シーンが苦手な人」はこの先大丈夫かしら、と冒頭から心配になるほど。

切り落とされた手首とかが何度も出てくるし、これでもかとばかりにバタバタと人が大量に死んでいく悲惨な展開が続きます。亜人・佐藤グループに撃ち殺されたり爆撃されたりして、投入された特殊部隊SATまで全員死亡。

最近あまり見ないような死人の山盛りオンパレードで、これ、なんでR指定ないのか疑問。しかも殺されるだけでなく、亜人の圭と佐藤は、リセットして復活するためにバトル途中で何度も自殺するのですよ。自分で頭を撃ったり、喉を切ったり。

痛みをリアルに想像してしまう、いわゆる共感性の強い人にはしんどいシーンが多いので、要注意です。

ところで今作での見どころは、違和感のないCG。

特に、亜人の身体から黒い粒子が放出される描写と、その粒子の集合体で黒い人体のような分身が形成される様子は見事です。漫画で描かれた架空世界を、実写で躍動感とともに体感できて、見ごたえがあります。

黒い粒子は原作ではIBM(Invisible Black Matterの略称)と呼ばれていますが、作品中にその呼称は出てきません。圭も自分のIBMを「おい幽霊!」と呼んでて、しかもなかなかコントロールできないまま一緒に山中で過ごすところは、数少ないコミカルなシーンでちょっと笑えます。

亜人は死ぬと、むしろダメージをリセットして再生できてしまうので、普通の戦闘のように殺しても倒せないんですね。勝つためには逆に、殺してはダメなんです。そのジレンマを克服する戦い方の難しさがキーとなります。このあたりは、亜人の特性ならではの面白さ。

佐藤健以外のキャスティングとして、亜人・佐藤に綾野剛のほか、玉山鉄二、城田優、千葉雄大、川栄李奈と、なかなか豪華なメンバーを揃えています。

綾野剛の鍛えた肉体美も良かったし、城田優のガタイの良さからくる迫力も見栄えがいい。川栄李奈も、かなりのアクションシーンをこなしてます。

AKB時代にトップレベルの人気でもグループ卒業後に失速するメンバーが多い中、彼女はむしろ辞めてからのほうが活躍してる数少ないメンバーなのでは。

作品全般のテンポやアクションの迫力等は、文句なしといったところ。物足りなさという点で言うと、肝心の主人公・圭の内面があまり見えてこない。口数も少なく、感情をあまり表さない雰囲気は原作の圭もそうなんですが、実写ではキャラ設定が変わっている上に、それを補うだけの心象描写が無い。

亜人・佐藤と敵対して闘う理由も、終盤に「(佐藤が)嫌いなんだよ」というくらい。なんというか、アクションに次ぐアクションに押し切られて、圭の人物像がぼんやりしてる感じ。

性格とか感情がよく見えないまま畳み掛けるようなアクションの連続に、後半ちょっと飽きてしまいました。「もういいからそろそろ決着ついてくんないかなー」て感じで。

単純に殺したのでは復活を招くため、圭は自己犠牲を伴う作戦に出て佐藤を倒すのですが、身体の一部を切り落として残しておいたことで、再生(復活)します。

でも、戦闘現場に残った佐藤の帽子を拾う、謎の手。

「帽子を拾ったのは再生した佐藤なのでは?」という疑惑が残るエンディングです。続編が作れるよう含みを残してるのがありあり。

もし続編を作るなら、改変した圭のキャラ設定としての人物像をもっとガッツリ見せてほしい。アクションのオンパレードだけだと、いくらIBMのCGが良く出来てても、やっぱり食傷気味になってしまうので。

Pocket

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする