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「DESTINY 鎌倉ものがたり」~懐かしくも優しいファンタジー

 

人間だけでなく、幽霊や魔物も住むという設定の鎌倉が舞台のコメディーロマン・ファンタジー。堺雅人、年の離れた新妻・高畑充希がかわいい。 エンドロールに流れる宇多田ヒカルの「あなた」が沁みます。
おすすめ度★★★★

あらすじ

鎌倉に住むミステリー作家・一色正和(堺雅人)のもとに亜紀子(高畑充希)が嫁いでくるが、さまざまな怪奇現象が起こる日常に彼女は戸惑ってしまう。犯罪研究や心霊捜査にも通じている正和は、迷宮入りが予想される事件の折には、鎌倉警察に協力する名探偵でもあった。ある日、資産家が殺害され……。

シネマトゥデイより

「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズと同じ、山崎貴監督作品。ALWAYSで見られた「懐かしい昭和の光景」が、この作品でも楽しめます。

クラシックカーに、レトロなファッション。縁側のある日本家屋。その時代や近い時代を生きた人にとって、その懐かしさだけでいろんな記憶が刺激されて胸がいっぱいに。

ただし、この作品では懐かしい昭和の風景を描きながらも、あえて時代を特定していないらしく、「100ショップで買った」などという現代っぽいシーンも…。昭和っぽさに徹底しても良かったんじゃないでしょうか。

舞台となった鎌倉はだいぶ昔に一度出張で行ったきりで、当時は古都を感じる時間的余裕もなかったのが、今思えば残念。

物語の舞台の鎌倉は、古い時代背景に加え、人間以外にも幽霊や魔物が自然に共存しているという街。この設定が、私はとても好きでした。

魔物といわれる、妖怪のような生き物たちが開いている夜市。魅惑的なその夜市の明かりに誘われて、怪しげな夜店が立ち並ぶ市場に足を踏み入れる新妻・亜紀子(高畑充希)。こんな夜市を見つけたら、行ってみたい衝動を押さえきれる自信は、私もない。

観る前は、幽霊や魔物も住んでるという設定に「無理があるんじゃないの」とシラける心配をしていたのだけど、飄々として陽気な死神(安藤サクラ)も含め、ほのぼのしてしまって細かいことはどうでも良くなってしまった。

死んだおばあさんが幽霊申請(!)をして、まるで人間と同じ姿のまま、夫の介護をしながらしばらく家族と過ごしていたりする。

そして、やがて亡くなった夫とともに、ようやく一緒に黄泉(よみ)の国行きの電車に乗り、うれしそうに旅立っていく。

死というものが、生と切り離されすべてが終わるということではなく、人生のレールの上に自然に繋がるものとして存在する描き方は優しく、救いを感じるものだと思う。

黄泉の国へ向かう一両電車は、千と千尋で銭婆の家へ行く千尋を思い出すし、他にも千と千尋をイメージするものもけっこうあったけど(化け物化したカオナシそっくりのシーンとかもある)、車窓から見える絶景はやはり美しかった。

単純に、あんな電車に乗って美しい光景の空中線路をたどって黄泉の国へ行けるなら、死ぬのも悪くないなあとさえ思ったくらい。そして着いた先の駅では、先に亡くなった家族が到着を待っていて、大歓迎とともに感動の対面を果たす人たち。

黄泉の国のイメージは、中国の湖南省にある武陵源と鳳凰古城を参考にしたそうで、崖のような岩場に小さな家がびっしり密集したアジアンテイストな創造物。これらも、黄泉の国での住まいとして魅力的な情景でした。

それにしても、年の離れた新妻・亜紀子を演じる高畑充希は、その言動と所作がとにかく可愛かった。ただ、キャラとしてはTVドラマ「過保護のカホコ」のカホコそのまんまって感じです。

亜紀子はその純粋さと優しさで、家に住み着いた、嫌われるはずの貧乏神にすら食事を出してもてなしたりして、夫に呆れられたりもする。

そんな亜紀子に何世にも渡り惚れている、ある魔物のせいで、黄泉の国へ魂を連れ去られる亜紀子。

亜紀子の魂を連れ戻すために黄泉の国へ向かう夫・正和(堺雅人)。この部分は後半なのですが、黄泉の国へ向かう電車や黄泉の国の情景が見ごたえがあるのに比べ、その後の展開がどうもショボイというか、ご都合主義すぎるのが何とも残念。

亜紀子を連れ去った黄泉の国の魔物・天頭鬼とその手下とのバトルもチャンバラレベルで、ファンタジーとはいえ、魔物たちが弱すぎ。もう少し迫力あるアクションにしてほしかった。

そんな文句をつけたいところもあるけれど、全体的には優しい気持ちになれるストーリーと、美しい映像が楽しめる作品。

そして、エンドロールで流れる宇多田ヒカルの「あなた」。

個人的には、彼女の作品の中で一番好きな曲になりました。

我が子を想う母の心を表現したものと思いますが、互いを想う夫婦の絆を描いたこの作品の主題歌としてもぴったりで、良い余韻に包まれます。おすすめです。

出逢いの教訓:
 袖触り合うも他生の縁

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