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「ズートピア」~単純にも深読みも楽しめる多年代向け傑作映画

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肉食動物が捕食をやめ、草食動物と共存するようになった世界。その中で文明都市として繁栄しているズートピアで、新米警官となったウサギのジュディの奮闘と成長を描く。(2016)
おすすめ度★★★★★

あらすじ

ハイテクな文明を誇るズートピアには、さまざまな動物が共存している。そんな平和な楽園で、ウサギの新米警官ジュディは夢を信じる一方、キツネの詐欺師ニックは夢を忘れてしまっていた。そんな彼らが、共にズートピアに隠された事件を追うことになり……。

シネマトゥデイより

最初に謝っておきます。観る前、決めつけてました。「カワイイー!」的反応しか狙ってない「女こども向け映画」だろうと。

いや、確かにかわいいんですよ。主人公のジュディはもちろん、他の動物キャラクターだってみんなかわいい。だってディズニーだもんね。

それに動物の毛のフワフワとした質感なんて思わず触りたくなるほどだし、大都市ズートピアの鮮やかな色彩や、エリアごとに異なる光景も、見てるだけで楽しい。全体のテンポも良くて長すぎないので、子供はもちろん楽しめると思います。キャラクターの動作も自然なので、昔のディズニーアニメによく見られた、無駄なボディアクションが無いのも、観ていてうるさくない。

でもキャラクターのかわいさは、この映画の魅力においては二次的なもの。大人が見れば(というかわかる人が見れば)、夢を追う難しさ、性別や人種等の差別問題など、さまざまな難しいテーマを上手く投影させていることがわかります。動物たちは擬人化されていると同時に、人間社会が抱える問題を形を変えて表現しているわけです。

現実の社会でも、皆が同じ機会を持っているわけじゃない。ジュディの生まれ育った田舎町でも同じで、ジュディの「警官になりたい」という夢を、みんなが無理だと思っています。応援してくれるはずの両親ですらそう。両親はジュディに「夢など諦めて、ニンジンを作って暮らすのが幸せなのよ」と、小さい頃から優しく諭します。無謀な夢を追って人生を台無しにさせたくないという、親としての愛情です。小さな草食動物であるウサギで警官になっている者はおらず、両親としての心配は自然なのです。

でも、この手の「危ない道を歩かせたくない」という、親の愛情という名の矯正で夢を閉ざされた子供は実際少なくないでしょう。「本当にやりたいことは他にあったんだよなあ・・・」と思い当たる大人は、ここでも胸を突かれます。

そして厳しい現実にめげずに、体格・体力でハンディがあることを乗り越えようと頑張るジュディの姿は、同じような境遇の人はもちろん、女性の活躍が難しいとされる世界で頑張っている人も、思わず自分を重ねてしまうでしょう。逆に、「自分は挑戦しないまま青春を終えてしまった」という後悔を抱える人にも、チクッとした心の痛みを残します。

晴れて警官になったジュディに待っていたのは、ボスの不当な(とジュディは思っている)業務差別。都会の小さくて粗末な部屋、思い描いていたのと違う仕事、うるさい上に愛想の悪い隣人。地方から上京した多くの人が直面するようなシーンです。

ジュディは頑張りやで正義感の強い性格ですが、何も問題がないわけではありません。親の忠告が脳裏に残っていて、キツネは危険という偏見がどこかにあります。自分は見た目で判断されるのを嫌がるのに、他の誰かを見た目で判断するシーンが一度ではありません。理想の共存都市とされているズートピアにも小動物タウンなどの住み分けがあったり、客を動物種別で選ぶ店があったりと、完全に融合した共存は実現できていないことが描かれています。

それと、表現が難しいのですが、被害者や弱者であることと善であることは、必ずしもイコールではないということが伝わってきます。現実社会でも、もともとは何らかの差別による被害者だった者が、救済のための優遇措置をさらに拡大しようと利権団体化してしまうケースがあるように。

未見の方のためネタバレは避けますが、この作品の中でも強者と弱者、善と悪が入れ替わって見えてきます。弱者とされていることを悪用しようとする者も明らかになり、マイノリティに対する思い込みがくつがえるでしょう。大人が見れば、特にアメリカの抱える人種差別問題の構造が透けて見えてくるのです。

もちろん、そんな教訓めいたことを抜きにしても楽しいシーンがいっぱいです。キツネのニックは皮肉屋だけど記憶力抜群、機転もきいてジュディと最高のコンビです。録音機能付きのニンジン型ペンの役割が、二人の間でだんだん変わっていく伏線も上手いし、何度も観て探したくなる小ネタも盛りだくさんです(スマホがアップルじゃなくキャロットだったり)。特にお気に入りのキャラクターはナマケモノのフラッシュ。免許センターで働いていますが、同僚のナマケモノたちも含め、みんな会話も動作も超々スローで笑ってしまいます。

 他にも、大きなシロクマを手下に従えた、ゴッドファーザーのような裏社会のボスがまさかの小動物だったりと、観てる側の思い込みや、無意識の偏見にも気付かされます。

主人公ジュディの吹き替えは上戸彩さん。声優のような上手さはないものの、ジュディの声のイメージとして悪くはないです。が、吹き替えの出来と関係なく、字幕でないと理解できない演出部分があります(落ち込んで帰った時のラジオから流れる曲の歌詞とか)。なので、吹き替えであっても字幕付きで観てみると、また違った発見があるはず。

とにかくいろんな面白要素がぎっしり詰まったズートピア。必見です。

※2017.2.28追記
「ズートピア」は 2017年第89回アカデミーにおいて
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コメント

  1. […] なんというか、登場人物が動物なだけで他の状況は人間と同じなのだから、リアリティがほしい部分はリアリティを持たせてほしかった。それなら違和感が無いのに、「映像上のリアリティ」と、「シチュエーション上のリアリティの無さ」が強引に混在している感じ。同じ動物キャラの擬人化アニメでも、「ズートピア」はそういう違和感の気持ち悪さが無い。そこが大きな違いです。 […]