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「パラサイト 半地下の家族」~家が浸食される恐怖(ネタバレなし)

全員失業中、そして貧しい住民たちが暮らす地区の「半地下」住宅で、日も当たらない暮らしをしているキム一家。何度も大学受験に失敗している長男のギウは、元同級生から「自分の留学中の代行」として、ある富豪一家の娘の家庭教師を頼まれる。
名門大学の学生と身分を偽り、富豪一家へ上手く入り込んだギウは、次に妹ギジョンを美術教師として引き込むことに成功し、さらに家族の就職を計画していく・・・。
貧困層と富裕層の格差、社会構造の悲哀を、ユーモアと恐怖を織り交ぜて描く。
ポン・ジュノ監督作品(2019年)
おすすめ度★★★★★

あらすじ
半地下住宅に住むキム一家は全員失業中で、日々の暮らしに困窮していた。ある日、たまたま長男のギウ(チェ・ウシク)が家庭教師の面接のため、IT企業のCEOを務めるパク氏の豪邸を訪ね、兄に続いて妹のギジョン(パク・ソダム)もその家に足を踏み入れる。

シネマトゥデイより

第72回カンヌ国際映画祭 パルムドール受賞作品。

いや~、こんなにハラハラする映画は久しぶり。

ホラーではないし笑ってしまうような小ネタもあるのに、ジェットコースターに乗ってガタガタとレールのてっぺんに向かっているような恐怖感。

そして当然、急降下の瞬間がやって来て、そのスピードがグイグイと加速しつつ物語が展開してゆく感じです。

日本では、「半地下」という住居物件はあまり見かけないように思うのですが、韓国では低所得層向けとして一般的なのでしょうか。

しかしこの半地下、酔っ払いから立ちションされるのを見上げる位置の窓なので、道路消毒の煙は吹き込むし、環境は最悪。

日は差さないし、タダ乗りしてるWifi電波の入りも悪い。水圧が弱いせいか変に高い位置に便器が置いてあったりするし、家全体も汚くて匂ってきそう。

そして、この「匂い」には重要な意味があり、心理的なタガを壊すキーワードにもなってきます。

表面を取りつくろっても隠し切れない、長年の貧困暮らしで染みついた「匂い」・・・。

これはある意味、人としての尊厳に関わるものとなり、悲劇を生むきっかけとなる。

名門大生になりすまして、IT社長の娘・ダヘの家庭教師におさまるギウ。そしてダヘの弟に美術の家庭教師を探してると知り、自分の妹、ギジョンを紹介する(もちろん妹ということは隠して、身元も偽装)。

高額な報酬に喜んだ二人は、両親もこの家での仕事にありつけるように画策していくわけですが・・・まさに一家全員でこの富豪の家にパラサイト(寄生)することにまい進していきます。

サブタイトルの「半地下」が意味するのは、文字通り、下層。

対照的に、富裕層の住宅地は坂の上。家庭教師として通う大邸宅へ、高台の坂道を見上げながら登っていくギウ。

アッパー層は上にいて、貧困層は下にいるという、社会構造の象徴そのものなのですね。

それは豪雨の中、キム一家の3人が社長宅から自宅へこっそり逃げ帰るシーンを見ても明らかになります。

ずぶ濡れになりながら高台の坂道を下り、歩道や階段を下り・・・と、自宅へ向かうためにどんどん「下」へと向かう3人。

それは、下へ下へと下って行った先が「本来の居場所」である象徴。

そして自宅にたどり着いたものの、半地下の家は大雨で完全に水没。高台の富裕層は大邸宅で優雅に眠る中、雨は貧困層の住む低い地区へと流れ込み、災害にまで泣かされるという皮肉。

3人はすべてを失い、泥まみれで避難所の体育館へ・・・。

富は受け継がれ、貧困は連鎖する。

この貧困のキム一家を見ても、みんな機転が利くし能力がないわけじゃない。でも仕事もないし金もない。

一方、IT社長の妻は美しくて純真だけれど、単純で世間知らず、家事の能力もない。それでも富裕層として大豪邸でなんの不自由もなく暮らしている。

この格差が現実というのがキツイ。一度貧困に陥ってしまうと、這い上がるのは本当に困難だと思う。

でも・・・でもですよ?

なんで主人公一家の家は「地下」なんだと思います?

上には上があるように、下には下があるのが常ですね・・・フフフ。

ネタバレになるので、あとはぜひ作品を観て予想外の衝撃を楽しんでください。
この作品は、雑事で中断されないように劇場鑑賞がおすすめです。

がっつりコースターに乗って、十分にハラハラ感を楽しんでくださいね。

野心の教訓:
上を目指すのは悪いことじゃない
でもスペックを盛るといずれバレるよ

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コメント

  1. k より:

    久しぶりの更新うれしいです!

  2. miharu より:

    まさか更新を気にかけてくださっていた方がいらしたとは思っておりませんでしたので、恐縮です。数あるサイトの中からご訪問いただき、こちらこそ大変ありがとうございます。ポツポツかもしれませんが、観た映画はできるだけレビューを残していきたいと思います。