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「フィリップ、きみを愛してる!」~IQは高いのに究極のバカという見本

愛する男への一途な思いから、詐欺と脱獄を繰り返すゲイのスティーブン(ジム・キャリー)。頭がいいはずなのに行動がおかしい人物を、ジム・キャリーが本領発揮で演じてます。(2009年)
おすすめ度★★

あらすじ

愛する家族より自分らしく生きることを選んだ警官のスティーヴン(ジム・キャリー)。しかし、ボーイフレンドと派手な生活をするために詐欺師となり、あえなく刑務所行きに。そこで今度はフィリップ(ユアン・マクレガー)に一目ぼれし、自分は弁護士だとうそをつく。釈放後、晴れて幸せを手に入れた二人だったが、スティーヴンはさらなるうそと不正を重ねていき……。

シネマ・トゥデイより

実話を元にしているという、信じられないほどバカな男の話。

この主人公スティーブン(ジム・キャリー)は、幼い頃に実の親から他人へと売り渡された悲しい経歴の持ち主。子供のとき、育ての親から「実は養子だ」と聞かされた彼は、実の母親を見つける情報を得やすいという理由で警官になります。そして探し出して会いに行くも、母だと認めず拒絶されてしまうのです。(彼が自分の名前を名乗ってないのに「スティーブン」と呼んでるのでバレバレなんですが)

しかしこのスティーブン、とにかくウソつきで詐欺師体質。子供の頃からゲイなのに、それを隠して結婚までしています。「リリーのすべて」のアイナーは、結婚後に自分の内にある女性に目覚めていく夫でしたが、このスティーブンは最初からゲイなのにそれを隠して女性と結婚してるんです。そして接待だの残業だのと妻にウソをつき、男性と浮気しているというゲスぶり。

ところが車の事故をきっかけに自分らしく生きると決め、妻へ「アイムゲイ!!」宣言。妻子を置いて家を出て、男性の恋人と暮らし始めます。妻にしてみれば結婚詐欺に遭ったレベルですが、この男の無軌道ぶりはそれにとどまりません。

一緒に暮らし始めたこの恋人のために、プレゼントとして高級品を買いまくり、豪遊&贅沢な暮らしを始めるスティーブン。当然給料では足りず、保険金詐欺やカード詐欺に手を出し始めます。 「ゲイライフにはお金がかかる」とか言って。

でも・・・

 

ゲイ関係ねぇーーーーー!!
あんなゴージャスライフ、誰がやったって金かかるわ!!

  

相手の関心をつなぎとめようとするかのようにお金をつぎ込む心理は、自身の生い立ちによるアイデンテティ―の欠落感にも一因があるのかもしれません。でも、それにしてもやることがアホすぎ。IQは高いのに、明らかに破滅の道を突き進むんですね。ハッタリで就いた役職とはいえ、会社役員しながら詐欺重ねて、無事なわけないでしょ。

で、結局逮捕・収監されます。そしてそこで出会ったのがフィリップ(ユアン・マクレガー)。おとなしくて優しい彼にゾッコンとなり、彼のためにいろいろを世話を焼き始めるスティーブン。そしていろんな手を使って自分とフィリップを釈放させ、晴れて二人で暮らし始めます。

・・・でやっぱりまた豪華生活を始めるスティーブン。そして当然また資金が足りなくなり、横領開始。で、また逮捕。

投獄されたら当然、フィリップに会えない。そんなことは耐えられない!!とまた脱獄を画策。彼の場合、脱獄といっても知能犯系の方法なので、隠れて穴を掘り続ける、なんてことはやりません。

書類偽造や、なりすまし電話で自分のニセ保釈通知をすぐ処理するよう仕向けたり、刑務所内の便利屋を使って面会者になりすます衣類を調達したりと、それはそれはキテレツなアイディアを連発して脱獄を図ります。

 

・・・アホやろ。

 

そもそも、学歴はなくても地頭はいいので、勤務先ではそれなりの成果を上げる人物なんですよ。だから、普通に働いてるだけで十分暮らせるし、フィリップとも一緒にいられるんです。だいたい、フィリップは贅沢な暮らしなんて望んでおらず、一緒にいられるだけでいいと言ってるのに。

スティーブンの羽振りの良さを疑い、「隠し事はないか」と心配するフィリップにも当然ウソをついて詐欺続行。とうとう共犯扱いでフィリップまで逮捕され、最愛のフィリップから「もう顔も見たくない!」とまで言われ、拒絶されてしまいます。

二人とも収監されたのち、最後には長期に食事を減らして痩せ、検査結果に手を加えてエイズ患者に偽装するという大胆かつ命がけの手段に出ます。そして刑務所からケア施設へ移さるのを狙い、そこから脱走してフィリップに会いに行くという・・・

2度目ですが・・・

 

 

・・・アホやろ。

 

普通に生活してさえいればフィリップと一緒に幸せに暮らせるのに、何度も詐欺に手を出しては離れ離れとなり、フィリップと会えないのが耐えられない!と必死に脱獄する。何その無駄なループ。一体キミは何と戦っているのだ?

一応コメディなのでジム・キャリーは良いキャスティングだし、脱獄を図る数々のアイディアは奇想天外で面白いのですが、「フィリップが好きなら何でまた同じことを・・・」と呆れてしまい、どうにも笑えない。

彼のウソは体質的というか、自分ではどうしようもないに近く、ある種の病気と言えるのかも。最後には異例の拘束をされるに至っていて、何ともいえない気持ちになります。

頭の良さの使い所を間違ってる上に、それを自力では修正できないスティーブン。

コメディというより、むしろ悲劇なのでした。

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