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「蛇のひと」~善人顔の悪意が一番怖い

第2回WOWOWシナリオ大賞受賞作映画化作品。サスペンスとミステリーの間のような、不思議なジャンルの映画です。(2010年)
おすすめ度★★★
 

 

あらすじ

陽子(永作博美)が出社すると、部長(國村隼)が自殺し、おまけに課長の今西(西島秀俊)までが行方不明で会社はパニックに陥っていた。部長の葬儀を済ませた後、彼女は副社長に呼ばれ、今西に会社の金を横領して逃亡した疑いがあると告白される。陽子は上司である彼の行方を捜すよう言い渡されるが、その足取りはなかなかつかめず……。

シネマトゥデイより

サスペンスというほどの緊迫感はなく、ミステリーというほどの謎でもなく。でも、今西という男の過去を辿っていくうちに見えてくる本性の、ザワザワ感に引き込まれていきます。

陽子(永作博美は、上司である今西(西島秀俊)が失踪し、その今西に横領の疑いがあるということで、社命によって行方を探しに行くことになるのですが・・・。

彼は過去、持ち前の説得力でいろんな問題の解決に関与してきたことを知ります。でも、彼によって助けられたかに見えた人たちが、結果的に不幸になっていること知り、今西の言動の真意に疑問を持ち始めるわけです。

そして故郷を訪ね、今西の不幸な生い立ちと、子供時代の今西が他人の心理を操って殺人を起こさせ、復讐をしたことを知ります。

ここから先はエンディングまでの話を含みます。犯人が明らかになるようなストーリーではないのでネタバレとはちょっと違いますが、未見の方はご注意ください。



今西は、自分の口車で他人を操れることを自覚しています。親身になっているようにみせかけ、その実は不幸へと導くことが可能な能力を持っているのです。そしてそれは、他人の心理を見抜く能力から生まれています。

はっきりとは描かれていませんが、今西が陽子(永作博美)のことを好きだったことは、間違いないと思います。そして、陽子は今西の行方を探すうち、そのことに気がつくのです。

過去において今西が関与してきた相手は、一見、彼が好意的に接していた相手ばかりだったことから、今西が自分に関わろうとするなら結婚相手に関することだろうと思い当たるのですね。

自分がなかなか結婚に踏み切れないでいる相手(恋人)に、今西が何か仕掛けるのではないかと気がつく陽子。

心配になって恋人の働く工場を訪ねた時、その職場にすでに入り込んでいた今西が現れるシーンは、ちょっとゾッとしました。

善人顔で、悪意が渦巻く内面を抱える今西。

陽子はそのことを知り、今西は陽子の前でそれを認めます。

陽子は「私の中にも蛇はいる、でも誰だってそうだ、だけどみんなが誰かの不幸を望んでいるわけじゃない」と告げ、そして「一緒に帰りましょう」と言うのです。

彼の正体を知った上でそう言う陽子に、「これからも人を殺すかもしれないんだぞ」と答える今西。

陽子が「・・・だったら、私が見張ってます・・ずっと。」と言ったときの、今西の表情。

そして一瞬の間があったあと、思い直したように「見張ってるって何それ監禁?めっちゃ怖いわ」と茶化し、立ち去ります。

彼女から離れようとしたのは、初めて本当に相手のことを想って選んだ行動でしょう。

ある意味、陽子の告白ともとれる言葉をまっすぐに告げられた時に彼の中にあったのは、内面に蛇を抱える自分を肯定された嬉しさと動揺、そしてこんな自分がいることで彼女を不幸にしたくないという思いの、両方だったんじゃないでしょうか。

かつて腹違いの兄が、負けた相手である今西の命を奪うのではなく自殺したように、陽子の恋人には手を出さず、海に向かって車のアクセルを踏み込む今西。

陽子の、善人である恋人に負けた自分自身を消してしまうために。

陽子がダッシュボードに置いておいた、お土産のプリズムスコープの存在に気づき、海に突っ込む直前でブレーキを踏む今西。

「せやねん。これ探しててん・・・」とつぶやき、プリズムスコープで空を見上げます。それは、世の中をすべて美しく見せてくれる魔法のおもちゃ。

子供の頃、取り上げられて捨てられていなかったら、彼の人生は違ったものになったのかもしれません。

すべてが描かれているわけではないので、観る側の想像に任されるラストになっています。

陽子は恋人とどうなったのか。

今西に見抜かれたように、本当は乗り気でなかった自分の本心に従って、結婚をやめたのではないか。

今西のその後も描かれてはいませんが、陽子と若い男性社員との会話から、会社には戻らず姿を消したことがわかります。

世の中には、わかりやすい悪意を向けて他人を傷つける人ばかりではなく、親切な顔をしながらジワジワ効く毒を盛る人もいます。

でも、今西が提示した甘い毒(解決方法)に手を出して不幸になった人は、だまされたというより、自分の欲求優先の選択に逃げた人とも言えます。

一方、6年越しで芽が出た漫画家のように、今西の進言に従ったとしても、その後の努力で成功にたどり着いた人もいる。

今西は関わりのあった人たちに対し、悪意を隠して意識的に不幸へ導いたのか。

それとも、もしかして本当によかれと思ってやったこともあったのか。その境界線は不明です。

いずれにしても、内側に毒蛇を持つ人に誘導されて不幸になることのないよう、気をつけたいものです。

想像に委ねられている部分があるため、そういうのを好まない人にはモヤモヤが残るかもしれません。でも、地味な映像に終始しても不思議な余韻の残る作品です。

 対人教訓:
 悪魔的誘導に乗らぬよう
 自律心忘るべからず

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