東映ビデオ 百円の恋 通常版 【DVD】
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自堕落な三十路のひきこもり女・一子(いちこ)。どうしようもなかった一子が見せる、初めての本気とその痛みに泣けてきます。(2014年)
おすすめ度★★★★
あらすじ
32歳の一子(安藤サクラ)は実家でだらしない毎日を過ごしていたが、離婚して実家に戻ってきた妹の二三子といざこざを起こし、一人暮らしをすることに。100円ショップで深夜労働にありつき、相変わらずな日々を送っていたものの、ボクサーの狩野(新井浩文)と恋に落ちる。狩野との幸せな日々はすぐに終わってしまうが、ある日、たまたま始めたボクシングが一子の人生を変える。
シネマトゥデイより
これは、安藤サクラなしでは成立しなかった作品でしょう。序盤と終盤での別人ぶりは、本当に見事としか言いようがありません。
最初の頃、一子(いちこ/安藤サクラ)の不潔で自堕落な暮らしぶりは、臭ってきそうなくらいです。ヨレヨレの部屋着でゲームをしながら、ブヨブヨの背中をボリボリ掻いてる様子はホントひどい。
顔つきや目つきもどんよりしてるし、髪は伸ばしっぱなしのため、下半分だけ茶髪が残ってる。部屋は汚いし、この不快描写がどこまで続くのかと心配になるほど。
実家は弁当屋を営んでいるけど、切り盛りしてるのは母親と、出戻りの妹。一子は32歳で仕事もせず、ウダウダと引きこもってるんですね。そのくせ態度はデカイという、最悪な女なのです。
妹と大喧嘩となり、初めて家を出て一人暮らしを始める一子。コンビニのような100円ショップで働き始めます。しかしまあ、このショップにいる男たちが軒並みクズなんですよ。というか、作品中に出てくる男はみなダメ男ばかりです。
特に最悪なのが、ショップ同僚の野間という中年男。こいつはヘラヘラと軽薄で、最低な人間性が丸見えの話を延々としてくる。
これだけでもムカムカが止まらないのに、さらに嘘つきで卑劣。あげく、一子を殴ってホテルに連れ込み、抵抗する一子のみぞおちにさらにパンチを入れて動けなくするというゲスぶり。
このとき一子に浴びせる一連の言葉が下劣すぎて、猛烈に怒りがわいてきます。もうね、もし自分が一子だったら、この怒りのエネルギーで自分の背中からいきなりスタンド出現して、スタンド使いの能力に目覚めるんじゃないかと思うくらいです。(スタンドが何かわからない方は「ジョジョの奇妙な冒険」13巻~を読んでね!)
この先はエンディングまでの話を含みます。未見の方はご注意ください。
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一子が気になっていた、ボクシングジムの男、狩野(新井浩文)。この男はいつも100円ショップにバナナを買いに来ることから、店員はこっそり『バナナマン』とあだ名をつけている。この狩野にもらったチケットで試合を見に行くが、負けてしまう狩野。後日酔って倒れている狩野を介抱したことから、一子のアパートで同棲のような生活が始まる。
この狩野も、ダメ男。(新井浩文の演技はすごく良いですよ)
「ぶっきらぼうだけど根は優しくて誠実」系かと観ているこっちも期待するも、実はただの無神経野郎。
で、あっさり他の女へ目移りして一子は捨てられてしまいます。
それでも、始めたボクシングに次第にのめりこんでいく一子。最初のヘナヘナの動きと、もっさりと重い体つきが、段々変わっていく様子が素晴らしい。
プロテストを受けられるギリギリの年齢で挑戦する一子。
その頃には身体も引き締まり、足さばきもパンチも完全にボクサーのそれになっています。吹き替えでなくすべて安藤サクラ本人が演じているので、実際に相当量のトレーニングを積んだはずです。シロウト目にも、演技でそれらしく真似しただけではないことがわかります。
一子は、「試合をしたい」とジムに願い出ます。却下されながらも、なんとか試合にこぎつける一子。ダメ人間だった32年間の自分から起死回生は果たせるのか。
リングへ向かう廊下から試合の間じゅうずっと、「がんばれ一子!!」という応援コールを内心叫びまくる私。出だしの頃の不快さは消え、完全感情移入です。殴られまくって顔はボコボコ、ダウンしても立ち上がり続ける姿に、思わず涙がこぼれます。
結局、ボロボロになって敗北する一子。勝ってほしかったけど、勝てなかった。
試合後、所属ジムの人たちが帰ったあと、一人で最後に控室を出て会場をあとにします。そこで待っていた狩野。一子は狩野に「勝ちたかったよ・・・」と何度も言いながら、試合後初めて号泣するのでした。
そうだよね。ものすごく必死でがんばったんだもん、勝ちたかったよね。
一子は負けて泣いていたけど、でも、観ている人にはわかる。一子自身は気づいてなくても、一子は「ダメ人間だった自分」に完勝したんだよ。
どんなことだって、人から認められるような結果を出すのは難しい。でも、もっと難しいのは「新たな一歩」を踏み出すことそのものなんだと思う。特に、大人になってからほぼ同じような毎日の中で、生活が一変するような「新たな一歩」を踏み出すのは、すごく勇気が要ることだ。
一子の今後の生活は、一見さほど変わりばえしないかもしれない。帰って来て、よりを戻した感じの狩野は、定職もないし、きっと無神経ぶりも変わらないのだろう。
一子は実家の弁当屋を手伝い始め、その生活の様子は華やかさなんてない。でも試合を観ていた家族はみんな一子の変化に胸を打たれたし、何より一子自身、もう決して以前の引きこもり生活には戻らないだろう。
たぶん、それなりの暮らし。でも、以前とは違う明るさを、未来に感じることができる。それで十分だ。
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