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「ハドソン川の奇跡」~最悪の不幸と最高の幸運

 

乗客155名を乗せた旅客機が飛行不能に陥り、ハドソン川に着水した事故の実話。全員が無事救出され、機長が英雄視されることとなったが、その着水判断は本当に正しかったのか。調査が開始され、機長の苦悩が始まる。(2016)
おすすめ度★★★

あらすじ

2009年1月15日、真冬のニューヨークで、安全第一がモットーのベテラン操縦士サレンバーガー機長(トム・ハンクス)は、いつものように操縦席へ向かう。飛行機は無事に離陸したものの、マンハッタンの上空わずか850メートルという低空地点で急にエンジンが停止してしまう。このまま墜落すれば、乗客はおろか、ニューヨーク市民にも甚大な被害が及ぶ状況で彼が下した決断は、ハドソン川への着水だった。

シネマトゥデイより

こういうパニック映画というのは通常、事故発生時がクライマックスとなるものですが、この作品は違います。映画開始時点で、すでに飛行機事故から生還して何日も経っている状況なのです。

「え、事故の後なの?この先、盛り上がりに欠けるのでは?」と心配になります。でも事故の回想を何度かに分けて盛り込む方法で緊迫感を分散しています。

機長の瞬時の判断、そして長年の経験と操縦技術によって、まさに奇跡と言える着水が可能となったわけです。ところが、一躍ヒーローとなった機長(トム・ハンクス)に、調査委員会が向け始める疑念。シミュレーターの結果では、当初の管制官指示による空港滑走路への着陸が可能だった、と言うのです。

そうなれば英雄から一転、乗客を自ら危険に向かわせた罪人となってしまいます。一体真実はどうなのか。機長の判断は正しかったのか。ヒーローとして注目され生活が変わる中、事故の悪夢やフラッシュバックに悩まされ、苦悩する機長。

この映画のクライマックスは事故そのものではなく、事故を検証する公聴会です。大勢が凝視する中、事故を再現するシミュレーションが行われ、無事に滑走路の着陸に成功する結果が出ます。つまりそれは、機長は無謀な着水を選択したことの証明と同じ。機長は、このシミュレーションに「人的要因」が抜けていることを指摘し、引き返すまでの35秒を加えた再現を行うこととなります。果たしてその結果は・・・。

手にじんわりと嫌な汗が浮かぶくらい、ある意味事故そのもののシーンより緊迫感に包まれます。

この機長は精神力・判断力と操縦技術に優れ、そして何より人格的に素晴らしい人であるのは間違いありません。乗客はバードアタック(鳥衝突)によるエンジン停止という最悪の不幸に見舞われましたが、同時に最高に幸運であったとも言えます。この機長でなければ全員の死亡にとどまらず、墜落現場での二次被害も起きたことでしょう。

しかしながら、この作品は基本的に実話であり、美談が暗転したりしていないことがわかっているので、映画というエンタメ作品として観たときインパクトの弱さはいなめません。96分という長さが妥当であり、機長や家族の葛藤とか、管制官や救助隊をもっと詳細に描いてしまうと、しつこかったり時間稼ぎのようになってしまうでしょう。

クリント・イーストウッド監督の力量の問題ではなく、ドキュメンタリーではなくエンタメ作品である以上、素材としてちょっと弱いのが残念。

特に日本の場合、頻繁に起きる天災のほうがずっとショッキングであることが多いため、そう感じてしまうのかもしれませんが。

でも、飛行機に乗るならばぜひともこんな機長にお願いしたいと、思わずにいられません。

 

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