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「おみおくりの作法」~人生を終えたとき、見送ってくれる人はいますか

 

身寄りのない死亡者の遺族を探し、葬儀を行おうと手を尽くす民生員のジョン。地味な仕事を20年以上続けてきた彼だったが、経費削減のため解雇を告げられてしまう。最後の仕事となった遺族探しのあと、彼に起きた出来事とは・・・。(2013年)
おすすめ度★★★

あらすじ

公務員のジョン・メイ(エディ・マーサン)は、ロンドン南部ケニントン地区で亡くなった身寄りのない人々の葬儀を執り行う仕事をしている。いくらでも事務的に処理できる仕事だが、律儀な彼は常に死者に敬意を持って接し、亡くなった人々の身内を捜すなど力を尽くしていた。

糸口が全て途切れたときに初めて葬儀を手配し、礼を尽くして彼らを見送ってきたが……。

シネマトゥデイより

なんとなく「おくりびと」を思い出してしまうタイトルですが、内容は全く違います。「おくりびと」は『遺体の尊厳』をテーマとしていますが、この作品は「葬儀と埋葬」を最良なものにして見送ってあげたいと努力する男の話です。

ロンドンのある地区の民生員・ジョン。彼は、担当地区で亡くなった身寄りのない人の家族を探し、葬儀の手配を行います。まじめで口数も少なく、でも手を尽くして家族を探すジョン。それでも見つからずにジョン一人で葬儀を行う際にも、遺品や写真から故人の生前の様子に思いをめぐらせ、祭司に読み上げてもらう原稿も故人の人生をできるだけ讃える内容にします。その葬儀に、たとえジョンしか参列していなくても。

そんなふうに、見ず知らずの故人を丁寧に見送ってきたジョンですが、上司から突然解雇を言い渡されます。担当地区を統合して人件費を減らすため、リストラされてしまったのです。

そんな理不尽な仕打ちにも、声を荒らげたり抗議したりすることなく、静かに受け入れるジョン。

なんかね、こういう人って見ていて切ない。地味な仕事をこつこつとまじめに続け、評価もされず、それどころか都合よく解雇の対象になる。44歳で独身、家族もいない。生活に派手さはなく、食事も缶詰やトーストなど簡素なものを一人で食べている。

自分が手がけて見送ってきた身寄りのない故人たちの、引き取り手もない写真を、アルバムにして持っているジョン。そのアルバムにある写真は、多くの故人の遠い昔の姿。幼かった頃、美しかった頃、精悍な若者だった頃・・・。スナップ写真だったり証明写真だったり身分証だったりとさまざまでも、それらは故人が生きていた頃の人生の1ページが焼き付けられたもの。白黒の、セピアのそれらはとても古いものばかりで、過ぎ去った時間の長さを感じさせます。

そして、親族でもないのに彼らの人生の足跡を残そうとするかのように写真を引き取るジョンに、何とも言えない気持ちになります。  

解雇を言い渡されたジョンですが、最後に手掛けた案件でどうしても親族や友人に見送ってほしくて、関係者を訪ね歩きます。そしてようやくたどりついた、故人の娘や軍隊の仲間。誠実なジョンに、故人の娘は好感を抱きます。

孤独なジョンに、ほのかな恋の訪れが見えた直後に、衝撃の展開が待っています。そして、ラスト5分にも。ネタバレしてしまうとこの映画を観る意味が完全に消滅するので避けますが、おそらく評価が真っ二つに分かれると思います。私は落涙してしまいましたが。

でも、「なんじゃこりゃ」と思ってしまう人の気持ちもわかります。号泣する人もいれば白ける人もいるであろう、そんなラストです。私が、泣いてしまったのにおすすめ度3つなのは、ジョンのまじめさや優しさのむくわれ方が、違う形であってほしかったからです。

この作品では、亡くなった方を見送るためにジョンが心を尽くす様子が描かれていますが、実際に日本でも、孤独死や葬儀をしてくれる人がいない方が増えているといいます。以前見たドキュメンタリーでは、ある高齢男性が亡くなったのですが、葬儀に親族はおらず、福祉系とか業者さんとかの関係者が3人ほどいただけでした。

元銀行員で、銀行員時代は高いポストにもいたという男性。かつての社会的地位を考えれば、その見送りの光景はかなり寂しいものでした。退職後離婚して元妻や子供とも疎遠になったとのことでしたが、それだけでなく、おそらく会社を離れてからのコミュニティや親しい人はなかったのでしょう。

生涯未婚率も上がっていますし、亡くなったときに近親者がいないという状態も珍しくなくなっていくのではないでしょうか。

一方、ちょっとジンとくるような話を聞いたこともあります。以前、当時の上司(係長)が「今週末に葬式があるんだよ」というのでご親族のことかと思ったら、亡くなったのは、飲み屋さんをやっていた、かつてのおかみさんだというのです。そのおかみさんには身寄りがなく、葬式を出す人がいない。それでそのお店の昔の常連さんたちが集まって、有志でお葬式をすることになった、というのです。

その話をきいたとき、かつてそのお店に集い、おかみさんと共に笑顔で語り、楽しく飲んでいるおじさんたちの姿が浮かんできました。きっとそのおかみさんは常連さんたちに慕われていて、その店で過ごした時間はお客さんにとっても思い出深いものだったのでしょう。

たとえ近親者がいなくても、そんなふうに見送ってくれる人がいたら幸せだなあ・・と思ったことを、この作品を観たとき思い出したのでした。

血縁者がいるかどうかより、良い関係の交流を持つ人がいるかどうかで人生の最期が変わるのかもしれません。

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