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「アナと雪の女王」~個性を押さえつけることの罪深さ

主題歌・劇中歌含め世界的に大ヒットしたディズニー作品。雪の魔法使い・エルサの力で凍ってしまった国を救う真実の愛とは。(2013年)
おすすめ度★★★★★

あらすじ

エルサとアナは美しき王家の姉妹。しかし、触ったものを凍らせてしまう秘められた力を持つ姉エルサが、真夏の王国を冬の世界に変化させてしまった。行方不明になったエルサと王国を何とかすべく、妹のアナは山男のクリストフ、トナカイのスヴェン、夏に憧れる雪だるまのオラフと一緒に山の奥深くへと入っていく

シネマトゥデイより

言わずと知れたこの作品。「レリゴー」の大ヒットで、聴いたことのない人を探すほうが難しいくらいでしょう。

ストーリー的には単純です。まあ深読みすればできる要素はありますが、流れのまま素直にミュージカルアニメとして楽しむ作品だと思います。誰かを大切に思う気持ち(ここでは姉妹愛)が氷の魔法を溶かす、というのが最終的に明かされるテーマではありますが、「愛」はディズニーの普遍的テーマなので、男女愛でないということを除けば王道でしょう。

私がこの作品で一番引っかかるのは、エルサの魔法でアナがケガをした時のこと。王様たちは石のトロールのところへ二人を連れてゆきます。魔法が当たってしまったケガなので普通の医者ではダメということなのでしょう。そこまではまあいいのですが、そこからが最悪。

トロールはエルサの力を「大きな危険を秘めている。力を抑えるのだ。」と言って空中に怖いイメージを投影させてエルサを震え上がらせます。「恐れが敵となるだろう」とか言うくせに、余計な「恐れ」を与えて幼いエルサをビビらせるんですよ。

なのにアナのほうは記憶から魔法のことを消して、何もなかったことにする。エルサにだけ「お前は恐ろしい力を持っているのだ」という罪悪感を植え付けるんですね。魔法の記憶をなくしたアナは無邪気にまた「遊ぼう」と言い続け、エルサに拒絶される理由がわからず傷つく。アナのケガとトロールのせいでトラウマを与えられたエルサは、そのまま引きこもり生活に突入。

そもそもアナのケガはただのアクシデントであって、魔法が暴走したわけじゃありません。コントロールできていたのに、ケガをさせたという動揺と、「大きな危険を秘めた力だ」と宣告されたせいで、自己否定感と恐怖心によって凍結化が止まらなくなってゆきます。

王様も、愛情からとはいえエルサを隔離する方法を取ったのが悲劇の始まりです。エルサの能力を「お前は他の人にはない素晴らしい力を授かって生まれたんだよ」と言って認めてあげていれば、エルサが引きこもりになって花の10代を無にする必要なんてなかったのに。

だって、どう考えたってすんごい力じゃないですか!

エンディングでスケートリンクを作ってあげてみんなが楽しんでたけど、真夏の屋外スケートリンク・スキー場はもちろん、エアコンの代替エネルギーの供給だってできちゃう。世界的な氷の祭典はもちろん、氷の城なんて、あったら絶対行ってみたいもん。

このエネルギーと観光資源だけで、エルサは神レベルですよ。王様もネガティブな面ばかりにとらわれなければ、エルサの能力は、悲観するどころかいかにポジティブなものか気がついたのにね。

王様も王女様も普通の人間なので、異能の我が子をどう扱っていいのかわからなかったんでしょう。でも、普通と違う我が子の個性を、ネガティブなものと決めつけ隠そうとした、完全な初期対応ミスです。(ハリポタで言えばハーマイオニーも両親は魔法使いじゃありませんが、エルサと違い自分の能力を否定的に考えていませんよね)

このお話はファンタジーですが、現実社会だって同じことです。他の子と違う能力や個性を持った子供を「異端扱いされないように」と、親の愛情の名のもとに押さえつけようとしたら、その子供にとっては悲劇でしかありません。

魔法の放出が呼吸レベルのエルサにとって「隠せ、抑えろ」と言われるのは、普通の人にとっては「ウ◯コすんな」レベルの無理筋な抑圧です。

そんな我慢を十数年も続けてきたのに、戴冠式で大衆の前に出たその日にバレてしまう。そりゃ絶望しますわ。今まで人目を避け続けた十数年の苦労が、一瞬で無になったんですから。

忌むべき力として隠し続けた魔法が皆に知られ、どうしていいかわからず遁走(とんそう)するエルサ。

雪山を一人登っていく彼女は絶望感に打ちのめされていましたが、やがて、一人で孤独だけれど自分を偽る必要がもうないことに気づき、心と能力が開放されてゆきます。

そして「Let it go」につながるわけです。5つを付けましたが、そのうちの4つはこのレリゴーのミュージカルシーンです。

「自主規制?もう関係ねぇわ!!」とばかりに、抑圧されてきた魔法の力を全開にあふれさせる気持ちよさ。レリゴーのシーンについてベタな評価と言われても、エルサがようやく自分の力を思い切り開放する描写が素晴らしい。

氷の階段を空へと伸ばしながら駆け上がっていく、喜びと開放感。
氷の城を足元からメリメリと立ち上げて作り出す壮大なパワー。

「長年押さえつけてきた力がこれほどのものだったのか」という驚きは、同時に、これを我慢してきたエルサの苦痛がわかるといういうものです。エルサの開放感によって、観ている側も大きなカタルシスを味わえます。

「Let it go」の原曲は実はもっとシビアな内容で、「もうどうでもいい、ほっとくわ」というヤケのやんぱち的ニュアンスが強いのですが、日本語の訳詞では「ありのままの自分になる」という、皆が内心そうありたいと願っている心情にフィットするのも、大ヒットした要因のひとつだと思います。

作品を全体的に見ればケチを付けたくなるところもありますが、私はレリゴーのミュージカルシーンのカタルシスだけで十分元を取れた気になれる作品です。

そして同時に、「子供の自己肯定感は絶対奪っちゃイカンよなあ」と改めて思うのでした。

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