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「舟を編む」~天職はコミュ障を救う

「大渡海」と名付けられた辞書を作り上げる人たちの、地道で長きに渡る作業を描いた作品。(2013年)
おすすめ度★★★

 

あらすじ

玄武書房に勤務する馬締光也(松田龍平)は職場の営業部では変人扱いされていたが、言葉に対する並外れた感性を見込まれ辞書編集部に配属される。新しい辞書「大渡海」の編さんに従事するのは、現代語に強いチャラ男・西岡正志(オダギリジョー)など個性の強いメンツばかり。仲間と共に20数万語に及ぶ言葉の海と格闘するある日、馬締は下宿の大家の孫娘・林香具矢(宮崎あおい)に一目ぼれし……。

シネマトゥデイより

出版社とか編集部を舞台にする場合、ファッション誌とか週刊誌とか、派手目に展開させやすいものはよくありますが、辞書編集とは・・・そこに目をつけたか!って感じで、ちょっと不意を突かれた思いでした。

考えたことなかったですが、辞書を一から作るとなると、それはそれは気の遠くなるような作業の繰り返しなのですね。(三省堂の大辞林は28年かかっているとか!私には無理っす・・・。)

主人公は松田龍平演ずる馬締光也(まじめみつや)。口下手で、人付き合いも上手くできず変人扱いされているモッサリ男子。それにしてもマジメって・・・ドラえもんの出木杉くん系ネーミング?

営業として全然パッとしない彼は営業部門ではお荷物状態。厄介払いされるがごとく、辞書編集に異動になります。

そこで、編集主幹の松本先生(加藤剛)の言葉に感銘を受け、辞書作りにのめり込んでいくのです。

この映画の大部分は地味な編集室と古い下宿のシーンですが、そんな中、脇を固める人たちがいい味出してるんです。

淡々として見える嘱託社員の佐々木さん(伊佐山ひろ子)は、様子がおかしくなった馬締を見て、表情も変えずに「好きな人でもできたんじゃない」と図星のご発言。

れを聞いて盛り上がる西岡(オダギリジョー)をよそに、彼女はすかさず馬締が恋する相手の働いてるお店の名前を聞いて即電話予約!

速攻でその夜にみんなでそのお店へ繰り出すのです。こういう素早さって大事よね。目立ちませんが出来る人です。

小林薫は定年になるベテラン編集者なんですが、この人の安定感はすごいですね。小林薫が出演していると、どんな作品もカツオとコンブのあわせダシが効いてるような味わいが出てくるから不思議。

しかしながら香具矢(宮﨑あおい)への一目ぼれはともかく、香具矢も馬締をそんなあっさり好きになるもんでしょうか。

実際、社内ではオタクの変人扱いで女子にまったく相手にされてません。サイドストーリーにしてもちょっと都合よくまとめ過ぎな気がしますが、下宿の大家タケが亡くなったことも、香具矢との結婚すら「12年後」と一気に時間が跳ぶ中で省かれているくらいなので、辞書編集にフォーカスする構成にしたのでしょう。

それにしても松田龍平は「まほろ駅前多田便利軒」でもそうだったけど、口数が少なくて人付き合いが下手な役がよく似合う。

あっちは瑛太と、こっちはオダギリジョーとのゆるコンビがいい感じ。この作品中、私が一番萌えたのは馬締が毛布と猫を一緒に抱えているシーン。かわいすぎです。

この「舟を編む」は全編に渡り辞書編纂にかける情熱を描いているのですが、私が最も感じたのはその情熱に対する感動とかではなく、天職に出会えることの幸せについてでした。

快活でなく口下手な馬締は、営業には向かず無能扱いされてる。でも、根気の要る作業をいとわず、言葉に対する想いを活かせる辞書編纂に携わり、才能を発揮する。

対照的なチャラ男の西岡(オダギリジョー)は、地味な作業には向かないけど機転がきき、処世術も駆使して大渡海出版中止の危機を回避する。

人間、不得意なことを平均まで引き上げようと苦痛な努力をするより、それぞれ得意なことを伸ばしたほうがずっと建設的だし、自信にもなる。

何より、個々の適性を活かした能力を持ち寄るほうが大きな成果を生み出せる。

小学校からずっと全科目を平均的レベルまでできるような教育を受けているせいでしょうか。苦手なことがあれば標準レベルにしなければと、大人になっても同じような努力をしなくてはと思いこみがちなんです。

でも苦手克服なんてしなくていい。より得意なことに力を注ぐべき。

金子みすゞじゃありませんが、「みんなちがって、みんないい」んです。

今日は、私の知らない馬締さんたちの情熱に想いを馳せながら、本棚の辞書を読んでみようかな。

マジメな人ほど聞いて!な教訓:
 苦手なことなど頑張らなくていいよ

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