島を救うため、越えてはならないと禁じられていた珊瑚礁の外へ舟を出すモアナ。水の描写に圧倒される映像美が展開されます。(2016年)
おすすめ度★★★
あらすじ
誰よりも海を愛する少女モアナは島の外へ行くことを禁止されていたが、幼少時に海とある出会いを果たしたことで運命が決定する。モアナは愛する者たちの救済のため、命をつかさどる女神テ・フィティの盗まれた心を見つけ出して再び平和な世界を取り戻そうとする。未知の大海原へと向かったモアナは伝説の英雄マウイと出会い、冒険を共にする。
シネマトゥディより
海の映像が流れるにつれ、「とうとうここまで来てしまったのか・・・」と、ある意味打ちのめされる思いで観ていました。
もう、すごいです。すごいとしか言いようがありません。透明感も質感も色合いも、もうアニメではなく実写の波や海そのものなんです。モアナをはじめ、人物の髪の毛や身に付けているものの質感も実写にしか見えません。顔だけがいわゆるディズニー顔なのですが、それがなければアニメだということを忘れるリアルさです。
以前からアメリカのアニメ界は、CGやVFXを駆使した映像を使っていましたが、いくら鮮やかな画を使っても、実を言うとあまり魅力を感じなかったんですよね。観ている間は「目が引っ張られる」ことはあっても、何度も観たくなることはなかったんです。
でも、「アナと雪の女王」「ズートピア」の流れは、ターゲットを子供に絞らなくなったことは明らかで、子供と大人の双方を惹きつける多重構造になっています。
ジャパニメーションは系統が違うので、アメリカアニメと同じ路線を目指す必要はないのですが、人的にも技術的にも、圧倒的に投入されているアメリカアニメを見るにつれ、最近は複雑な思いがしてしまいます。
何というか、以前のアメリカアニメを観ても「金かけりゃいいってもんじゃないもんね」と、冷ややかな気持ちすらしたし、日本のアニメにささやかな自負心みたいなものがあったわけです。私の場合、何度も観たくなるアニメは、日本のアニメの中にしかなかった。
ところが、ディズニーが「1回観ればあともういいです」じゃないアニメを打ち出してくるようになった。しかも投入資金も技術もモンスター級で。路線が違うのだし、関係者でもない私が張り合う必要もないのだけど、なんか悔しいわけですよ。そして「モアナ」で「どんな映像だって作れちゃうもんね~」と、映像業界制覇を宣言された感じ。それが最初に言った「打ちのめされた感」の訳なのです。
前置きが長くなりましたが、個人的には「ズートピア」のような総合的な完成度は感じませんでした。
もちろん、先に言った水の質感や海の描写の素晴らしさをはじめ、幼い頃のモアナはすごくかわいいし、見どころはたくさんあります。主題歌も、歌い上げる感の強い曲調で、レリゴーほどではなくてもそこそこヒットするのでは。それでも映像の美しさ以外では、繰り返し何度も観たくなるようなストーリー性は薄いです。「ズートピア」で上げてしまった、大人の視点のハードルは超えられない作品だと思います。
大海原をモアナとマウイが進んでゆく航程が二人だけ(あと間抜けなニワトリも乗ってますが)なので、エピソードが不足気味。ココナツのお化けみたいな海賊とのバトルも、それを補うための無駄なにぎやかしに見えてしまいます。子供向けの、目のアトラクションコーナーという感じ。
モアナを見捨てて消えたマウイが突然戻ってくるのも、その心変わりの経緯がないので唐突すぎます。それにラスボス的な火山のモンスターだって、あんなに攻撃してきて戦っていたのに、突然おとなしくなって熱量が消えてストーンを受け入れるのもなんかなあ。都合良すぎて、大人目線では白けます。
ハートストーンが返されて元の女神に戻ったテ・フィティが山に姿を変えるくだりは、「もののけ姫」で頭を返されたでいだらぼっちみたい。花と緑がバーッと再生していくのも似てるしね。
というわけで、最初打ちのめされたものの、「絶対『もののけ姫』に影響受けてるだろ!」と最後にツッコミを入れるに至り、ちょっとおかしくなって劇場を後にしたのでした。
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