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「LION/ライオン~25年目のただいま~」~迷子が現代ならではの方法で帰郷

 

インドの少年、サルーが迷子の末に孤児となり、やがてオーストラリア人夫妻の養子となって成長する。遠い記憶の故郷と家族への思いが強くなり、思い悩むようになった彼の帰郷と、彼を育ててきた養父母の思いに泣けてくる。(2016年)
おすすめ度★★★★

あらすじ

インドのスラム街。5歳のサルーは、兄と遊んでいる最中に停車していた電車内に潜り込んで眠ってしまい、そのまま遠くの見知らぬ地へと運ばれて迷子になる。やがて彼は、オーストラリアへ養子に出され、その後25年が経過する。ポッカリと人生に穴があいているような感覚を抱いてきた彼は、それを埋めるためにも本当の自分の家を捜そうと決意。わずかな記憶を手掛かりに、Google Earth を駆使して捜索すると……。

シネマトゥデイより

 

映画のサブタイトルで「25年目のただいま」って・・・。「ただいま」って時点で帰ることが出オチしてるんだけど、いいの?・・・いいのか。タイトルでネタバレってことで。

ストーリーの大筋は知っていたものの、思いのほかインドでの少年時代のシーンが長かったことにちょっとびっくりしました。養子となってオーストラリアで成長した彼の、回想的に描かれるのかと思っていたので。インドでの貧しい日々の暮らしや、迷子で浮浪児となって過ごした時期を経て孤児院に入れられ、養子となるまでのシーンがとても長く、細かく描かれています。

しかし、インドでは年間8万人もの子供が行方不明になるとか。
8万人って・・・それでいいの?まともに対策する気はないんでしょうか。サルーの例なら、日本では親を探せないまま孤児になるという事態はありえない。カースト制度の影響のほか、富裕層と貧困層の格差が非常に大きいインドでは、学校に行けない子供もまだ多い。サルーの母親が文盲であったことは、おそらく就学の機会もなかったのでしょう。それは新聞でのサルーの親族探しを目にする機会を失った悲劇にもつながったと言えます。

サルーは浮浪児の時、優しくしてくれた女性の家に行き、食べ物や風呂の世話を受けます。いい人に出会ったのかと思いきや、翌日その家にやってくる謎の男。サルーの身体つきをチェックし、女性にOKを告げる様子に危機感を覚え、すきを見て逃げ出すサルー。

男はおそらく人身売買の仲買人で、世話してくれた女性はサルーをその男に売り渡す気だったのでしょう。多数の行方不明児がいる理由には、サルーのように迷子の親族探しの情報が当の親に届かないほか、こういった人身売買の闇があるのではないかと思います。

その後サルーは保護され孤児センターに入れられますが、環境は劣悪です。大人による児童虐待とみられる様子も描かれています。やがてサルーは、養子縁組団体の仲介でオーストラリア人夫婦の養子になります。

この夫婦、特にお母さん(ニコール・キッドマン)が注ぐ無償の愛によって、幸せに成長するサルー。しかし、タスマニアに着いてからの描写はほんのわずかで、シーンはいきなりサルーが大学生になってしまいます。どんなふうに過ごして両親になじんでいったのか、もう少し観たかった気がしました。

大人になったサルー(デヴ・パテル)は両親を愛し、感謝しながらも、遠い記憶の故郷と、家族への思いが次第に強くなっていきます。仕事も辞め、引きこもりのような状態でインドの故郷を探し始めるサルー。そのために頼ったのが、『Google Earth 』。

 

Google Earth 、改めてスゴイっす。

 

Google Earth って、家に居ながらにして世界中のエリアを拡大表示できるわけで、私のようなアナログ人間にはマジで意味わかりません。以前、Google Earth を私の老親に見せてあげたことがありましたが、やっぱり「何じゃこりゃ!!」と仰天してました。選んだスポットにガーッとフォーカスしていく様子は、確かに「魔法ですか?」レベル。

映画の感想から離れますが、「Googleが世界を支配している」って、割と本当なんじゃないかと思うわけです。このネット社会においてあらゆる情報を掌握してますし、そして検索順位でどの位置に表示させるかも、Google様の胸三寸なのです。

そんな現代の魔法を使っても、おぼろげな記憶の「駅近くの水タンク塔」を広いインドの中で見つけるのは容易じゃありません。しかも、インドの家族探しをすることは、今の両親を悲しませるのではないかという苦悩ものしかかる。

自分のあとにもう一人養子として迎えた弟に問題があり、両親の心労の種となっていたことから、自分まで心配をかけたくないという思いもあったのですね。

しかし、故郷を探す検索作業のため恋人と別れたり、仕事辞めて引きこもる意味がよくわかりませんでした。恋人は故郷探しに協力的だったのにね。描かれなかった事情があるのかわかりませんが。

この養父母ですが、サルーが大人になって知ったのは、彼らが自分たちの子を持てないから養子を迎えたのではない、という事実。

これは私にとっても驚きでした。不妊や高齢、同性カップルなど、実子を授かることが困難な人か、または実子のほかにさらに養子を迎える人しか聞いたことがありませんでしたから。

この夫婦は、実子を持たない選択をし、養子を育てることを選んだのです。このお母さんは大人になったサルーに告げます。子供の頃、雷に打たれたように神の啓示を受けたのだと。

この養母(ニコール・キッドマン)の出演時間はさほど長くないのですが、血縁のない子どもたちに注ぐ献身的な愛情に心打たれます。サルーの苦悩より、養母の深い愛情と苦悩、忍耐強さのほうが印象が強いくらいです。

サルーはようやく自分の記憶と一致する場所をグーグルアースで発見し、インドへ向かいます。そしてサブタイトルどおり帰郷と母親との再会を果たすのです。

養母への感銘、幼少期のサルーの可愛らしさ、そして実母との感動の再会と、ハッピーエンドのため安心して観られる作品です。

そして、エンドロールも見逃さないように。

「え、終わり? どっかに『ライオン』なんて出てきたっけ?」という疑問の答えが、エンディングでようやく解決しますので。

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