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「蘇える金狼」感想~松田優作の危険な魅力

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昼はさえないサラリーマン、でも実は企業乗っ取りの野望のため手段を選ばない裏の顔を持つ主人公:朝倉哲也(松田優作)。その野望の行方と顛末を描く。(1979年) 
おすすめ度★★★★

【解説】

 大藪春彦の同名小説の映画化で、遊戯シリーズでコンビを組んだ村川透監督、松田優作主演のハードボイルド。朝倉哲也は表向きは平凡なサラリーマンだが、夜は身体を鍛えて巨大資本乗っ取りを企んでいる。朝倉はある日、手に入れた麻薬で上司の愛人、永井京子を手なずけた。しばらくして会社幹部達の横領事件をネタに、桜井という男がゆすりに来ていることを突き止めた。朝倉は桜井と会社を巧みに利用して社長令嬢の絵理子と婚約することに成功するが、その一方で嫉妬に燃える京子は、ある決意をしていた。
 
allcinemaより
ハードボイルド小説らしい、主人公の欲望と生き様の鮮烈さを描いた作品。リアリティに欠けるところは多々ありますが(というか全編ツッコミどころ満載ですが)、そんなケチつけるほうが野暮じゃないかと思わせるパワーがあります。
 
松田優作演ずる朝倉哲也は、昼は平凡でパッとしないサラリーマン。でも巨大な野望を持つ裏の顔は、誰も知らない。
 
いいですねえ、この人物像。周囲から無能扱いされてる人間が、実はキレ者の顔を持つという設定が大好きな私にはたまりません。必殺仕事人シリーズの中村主水も、上司や同僚、さらには妻からもバカにされ見くびられていながら、実は凄腕の暗殺者で、闇にまぎれて悪人を葬るシーンで溜飲を下げたサラリーマンのお父さんは多かったはず。
 
この作品でその爽快感に通じる名場面は、社長の別荘で重役連中を前に松田優作が啖呵を切るシーンでしょう。おとなしい羊の仮面を取り、凶暴な金狼の姿をさらして吠える迫力にしびれます。
 
「オイ、俺がナメられておとなしく引っ込んでるような坊やに見えたのか!俺を殺ろうとする前にそのことを何度も考え直してみなかったのか!どうなんだ!!」
「内輪揉めならあとでゆっくりおやんなさいよ。とりあえず、今日の僕に対する無礼に対して落とし前をつけてもらいましょうか」
「これからは火遊びはほどほどにするんですな。オイ、大株主にコーヒーくらい持ってこんかい!ねえ?」
朝倉は中村主水と違い、正義のためではなく、あくまで自分の野望達成のために手段を選ばない危険な男です。いわゆるダークヒーローですが、犯罪者であっても松田優作の影のある魅力によって、抵抗感を覚えません。
 
企業乗っ取りに成功する朝倉。その過程で利用した京子(風吹ジュン)を本当に愛してしまったことで、というより、そのことを彼女に伝えなかったことで破滅するラストが印象的です。
 
それにしても、若き日の風吹ジュンのコケティッシュなことといったら!!女のかわいさと色気はかくあるべし!というお手本のよう。最近ではすっかり優しいお母さんの役が増えた彼女ですが、若き日の艶っぽいかわいらしさは、そのへんにいる若いだけの女優さんでは最近あまり見当たりません。松田優作との野性的なベッドシーンもインパクト大です。
 
普通ならヒーロー的な役どころになる千葉真一が、ゴロツキっぽい男を演じてるのも面白い配役ですね。それと全体的にハードボイルド一辺倒でもなく、成田三樹夫が裏返った声で「金子がね~!」のシーンは思わず噴き出すほどおかしいし、闇系興信所所長:石井の甲高い変な喋り方とか、コミカル要素を盛り込んでるあたりが、男臭さに胸焼けすることなく楽しめるアクセントになってます。
 
でもこの作品は何と言っても、松田優作の魅力で牽引していると言っていいでしょう。野心どころか女にも車にも出世にも興味がないような草食系男子から見ると、野望の果てに大金を手にし、真っ赤なカウンタックに乗って高笑いする朝倉は、理解不能な人物なのでしょうか。聞いてみたいところです。

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