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「ラ・ラ・ランド」~夢追い人の輝きとほろ苦さ(ネタバレあり)

女優の卵と、自分の店を持ちたいジャズピアニスト。二人の恋と、夢の行方は。(2016年)
おすすめ度★★★★

あらすじ

何度もオーディションに落ちてすっかりへこんでいた女優志望の卵ミア(エマ・ストーン)は、ピアノの音色に導かれるようにジャズバーに入る。そこでピアニストのセバスチャン(ライアン・ゴズリング)と出会うが、そのいきさつは最悪なものだった。ある日、ミアはプールサイドで不機嫌そうに1980年代のポップスを演奏をするセバスチャンと再会し……。

シネマトゥディより

日本での公開タイトル、「ラ・ラ・ランド」。
って、ところが原題のラは「LA」、つまりロスアンジェルスのことです。そのニュアンスが完全消去の「ラ・ラ・ランド」の表記って、ちょっとミもフタもない気が。

まあそれはともかく、プロローグはハイウェイでの渋滞ミュージカル。連なって動けない車から一人、また一人と出てきて始まる歌とダンス。(ワンテイクに見えますが、3つのカットをつなぎ合わせているのだとか)それでも、ロケの制限を考えると大変な撮影だったでしょう。

そしてライアン・ゴズリングのピアノ!これが吹き替えなしというからすごい。3ヶ月の特訓をしたとのことですが、あれが3ヶ月でできたということ自体が信じられない。ジャズピアノは未経験という彼が、それくらい完璧な演奏を見せてくれます。

オーディションに落ち続けている女優の卵、ミア(エマ・ストーン)と、自分の好きな純粋なジャズだけを演奏する店を持ちたい、ジャズピアニストのセバスチャン(ライアン・ゴズリング)。ラブストーリー部分は少女漫画チックです。

偶然の出会いが重なる→最初は反発し合う→次第に惹かれてゆく→恋に落ちる→片方の環境が変わる→すれ違いからギクシャク→衝突して別れる→でもやっぱり元サヤ→最終的に・・・という流れは、王道のラブスト-リーといった感じ。

でもロスのトワイライトの美しさ、クラシカルな撮影スタジオやカラフルなパーティーの情景、目に楽しい色彩と音楽に浸っているうちに、夢を観ているような気分に。プラネタリウムでは銀河を浮遊するファンタジーへとなめらかにスライドしていくのも、ミュージカルならではのエンタメとして楽しめます。

なので、細部のリアリティは求めないほうがいいです。二人とも悩みつつ他の仕事で生活費を稼ぎながら夢を追っているという状況ですが、いい部屋に住んでるし極貧でもなく、悲壮感はありません。これを日本版でリアルにやろうとすると、汚い4畳半でカップ麺すすって・・・みたいなことになりそう。うーんやっぱりこういう作品のテイストに合わないのでリアリティ排除で。

この先はエンディングまでの内容を含みます。未見の方はご注意ください。




自分には才能がないと夢をあきらめ、故郷に帰るミア。その直後にキャスティングのオファーオーディションの話が舞い込み、それを知らせるためにミアを迎えに行くセブ。

オーディションでは、脚本なしでパリで制作が進められる作品と説明されます。そしてフリースタイルでトークを求められるミア。そして彼女が語るのは、夢追い人だった女優である叔母のこと。ひたむきに夢を追う叔母の言葉を歌う彼女に、心打たれます。

オーディションの結果は期待しないと言うミアに対し、成功する、と彼女の背中を押すセブ。でも結果が描かれないまま、ストーリーは一気に5年後へ。

ミアはスター女優となり、かつて自分が働いていた、映画スタジオ近くのカフェへ客として来るように。家に帰れば、そこにいるのはセブではなく、見知らぬ男性とミアの幼い子供。そう、セブと一緒に生きることは叶わなかったのです。

ハリウッドスターやミュージシャンを目指すのは、その多くが散って消える夢。毎日、挫折と成功が生まれる世界。そのこと自体はリアルです。そして、その成功のタイミングが、恋人たちの関係を壊してしまうことは、実際にあると思う。

最後と思って臨んだオーディションは、彼女を成功へと導き、パリ行きが実現した。セブは、参加しているバンドのツアーで旅暮らし。

描かれてはいませんが、離れ離れの時間と距離、そして成功による生活の変化は、二人を以前の二人ではいられなくしたのでしょう。

ミア夫婦が音色に惹かれて偶然立ち寄った店は、セブがかつての夢を実現して作った、ジャズを聴かせるバーでした。ミアに気づいたセブが演奏するのは、かつての二人の想い出の曲。

そして展開されるミュージカルは、走馬灯のような二人の人生。ともに歩んでいれば、描かれていたような幸せがあったと空想される世界。このシーンがあったからこそ、余韻が生まれる作品になったと思います。でないと、女優になる夢を叶え、リッチ男性との結婚という甘いシロップをどっぷりかけた、ただのサクセスストーリー青春映画になってしまったと思う。

映画には「心の栄養」系の作品と、「目のお菓子」系の作品があると思うのですが、この「ラ・ラ・ランド」は前者2割、後者8割といった感じです。でもジャンクフード的スナックのようなお菓子ではなく、洋酒の効いたケーキといった感じ。美しくて甘いけど大人の風味があり、底の部分にはビターなカカオが隠れていて、後味が少しほろ苦い。

甘すぎないので、この先も繰り返し観たくなると思います。

*2017.2.28追記
「ラ・ラ・ランド」はアカデミー賞2017で
◯監督賞(デミアン・チャゼル)
◯主演女優賞(エマ・ストーン)
   受賞しました!

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