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「ちょっと今から仕事やめてくる」~ブラック企業を捨てよう、命を失う前に。(ネタバレなし)

上司から罵声を浴びせられ、過酷なノルマに潰されそうな日々の中で、心身が病んでゆく青年。そんな彼の前に現れた、昔の同級生だという男、ヤマモト。不思議なヤマモトの正体とは。(2017年)
おすすめ度★★★★

あらすじ

激務により心も体も疲れ果ててしまった青山隆(工藤阿須加)は、意識を失い電車にはねられそうになったところをヤマモト(福士蒼汰)と名乗る男に助けられる。幼なじみだという彼に心当たりのない隆だが、ヤマモトに出会ってから仕事は順調にいき明るさも戻ってきた。ある日隆は、ヤマモトが3年前に自殺していたことを知り……。

シネマトゥデイより

この作品の予告映像では、同級生だと名乗る男・ヤマモトが実は「3年前に自殺した」という記事を、主人公がネットで見つけるシーンが告知されています。

そのため、ビミョーなスピリチュアル系とか、安っぽいファンタジーだったらヤだなーと思っていたのです。と同時に、「『再会した同級生である相手が、本当は死んでいる』なんてオチを、告知しちゃうもんかなあ?」という疑問もあったので、最後どんな形で着地するのか興味がありました。

ほんのりネタバレになるかもですが、実は幽霊でした~みたいな脱力設定じゃありません。冒頭のファンタジックなシーンも、途中の伏線ほぼ回収されています(主人公たちが食事してた店にいた、幽霊みたいな不気味な女だけは謎のままでしたが)。やや無理がある部分はあるものの、ストーリーとしても破綻なくまとまっています。

主人公・青山隆(工藤阿須加)が就職した先は、典型的なブラック企業。部長(吉田鋼太郎)は、連日怒鳴り散らしながら、人格全否定レベルの叱責を繰り返す上司。パワハラであり完全なイジメなのですが、部長から青山(工藤阿須加)が理不尽な罵声を浴びせられてる間、周囲は無言でうつむくだけ。誰も制止の声を上げる人はいない。

しかしあんなの、よく黙ってられるなあ。我が身に火の粉が飛んで来ないように、ってわけ?自分があの場にいたら、キレないでやり過ごせる自信ないわ。

この部長の暴れっぷりは、見ていて胃が痛くなるようなひどさ。身体だけでなく精神に対しても殺人というものがあるとしたら、人の心を殺しまくってる状態です。「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」の品川祐がまだかわいく思えてくるレベル。(演技とは言え、今後は吉田鋼太郎を見るたびに今回の部長キャラを思い出して吉田鋼太郎自体を嫌いになりそう…。)

その理不尽な叱責と罵声に対し、時に土下座まで強要されながら謝り続ける青山(工藤阿須加)。胸が痛くなる光景が繰り返されます。

こんな仕打ち、まともな職場じゃない。

ここまでひどい会社が、実際にあるのかはわからない。でも、日本の20代の死因の第1位は『自殺』なのです。それを考えると、何らかの形で、多くは仕事と人間関係で精神を病み、追い詰められているのは事実。

この作品の青山(工藤阿須加)も例外ではなく、必死で耐え、頑張り続けます。

工藤阿須加は、初々しくて真面目な、新卒のサラリーマンのイメージにぴったりの配役でした。彼を救う『ヤマモト』は、福士蒼汰が演じています。福士蒼汰の関西弁はさすがにちょっと「作ってる感」がいなめませんでしたが、アロハ着て自由人らしき風貌で演じるヤマモトは、人なつこくて可愛かった。死を意識するほど追い詰められている人の身近に、ヤマモトのような人がいてくれたら、誰も死なずに済むのに。

青山の先輩社員で営業成績トップの五十嵐(黒木華)も、後輩思いの頼れる先輩であるように見えて、内心はノルマのプレッシャーで押し潰されそうになっています。ここを辞めたらあとがないという強迫観念で、必死で頑張りながら会社にしがみつこうとする彼女。 

青山はヤマモトと出会い、考えた末に会社を辞めることにします。あんな会社、ブッチしてもいいレベルだけれど、最後まで礼儀正しく、そして罵る部長にもひるまずに冷静に退職を告げる青山。

ああ、あんなふうに仕事辞められたらどんなに清々しい気持ちになるか…と、多くの人が羨望したんじゃないかなあ。喜びと開放感が押さえきれず、スーツ姿で飛び跳ねながら歩く姿は本当にうれしそうで、観ている側も救われた気分になります。

でも退職後の青山の選んだ道は、「そんなの真似できないよ」と多くの人は思ったと思う。現実的じゃない、と。確かに青山の人生リセット方法はレアケースだったけど、別に道は何だっていい。どんな道であろうと、仕事のストレスで命を失うより100万倍マシなんだから。

仕事辞めるより死ぬほうがしんどいでしょ、普通は。

ところがそれが逆転してしまうのが、仕事でメンタルを病む怖いところなんですね。会社辞めてしまえば済む話が、辞める選択すら見えなくなり、死を選んでしまう恐ろしさ。だからそこまで行き着いてしまう前に、ブラック企業から離れないとダメ。

今、「自分はちょっとヤバイかも…」と思う人は、ぜひ観てほしい作品。
「仕事辞めるなんて、そんなに簡単にいかないよ」と思うにせよ、「仕事とか会社とか、今いる場所が世界のすべてじゃない」と、改めて立ち止まって考えるだけでもいい。

感動を誘う設定がベタな気もしますが、爽やかな工藤阿須加と福士蒼汰のたたずまいで中和されてます。

難を言えば、「絶対劇場で観るべし!」と言えるだけの推しポイントが弱い。

エンディングは、川をたどり海へ出て、美しい南国のブルーの海岸の空撮映像が続きます。天国のような光景に癒やされながら、自分と仕事のマッチングについて、改めて考えさせられる作品です。

※もしも今の仕事や職場で苦しんでいるなら、仕事を変えることも考えてみては。
  * 転職サイト参考*

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