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「殺人の追憶」~押し寄せる余韻とモヤモヤにもだえる(ネタバレあり)

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殺人の追憶 [ ソン・ガンホ ]
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1980年代、韓国で実際に起きた連続殺人事件を基にしたサスペンス。犯人にたどりつけない焦りともどかしさを追体験するような作品。ポン・ジュノ監督・脚本。(2003年)
おすすめ度★★★

あらすじ

1986年10月23日、農村で若い女性の変死体が発見される。地元の刑事パク(ソン・ガンホ)は地道な取り調べを始めるが、現場は大勢の見物人で荒らされ、なかなか証拠がつかめない。やがて、第ニの事件が起きてしまう。

シネマトゥデイより

まず、ストーリーのベースとなった事件は、未解決です。そのため、ネタバレといっても作品上のストーリー展開に関することですのでご了承ください。

つまり、この作品は通常のミステリーやサスペンスドラマのように、「犯人はお前だったのか!」的な見せ場&カタルシスはありません。なので、そういった「スッキリ感」を期待すると裏切られますのでご注意くださいね。。(そういう意味でおすすめ度は3にしていますが、映画のクオリティ判定なら4つは付けたいところ)

時は1980年代、韓国の田舎町で連続婦女暴行殺人事件が起きます。事件にあたる地元の刑事パク・トゥマン(ソン・ガンホ)と後輩刑事、ソウルから応援に来た刑事ソ・テユン(キム・サンギョン)。

しかしこの地元の田舎刑事の捜査がひどい。ろくな根拠もないまま容疑者とした人を、取り調べと称してボコボコにする。あげくに天井からロープで逆さ吊りという、完全な拷問で自白を強要するに至っては呆れるしかないし、これでは他の事件でも冤罪(えんざい)が多かったのでは。

当時の韓国の警察事情が実際こんな感じだったのかはよくわかりませんが、殺人の現場保存に失敗して痕跡の物証をパーにしたりといったずさんさや、強引な自白強要は現実にあったようです。

的外れな容疑者を次々と暴力で締め上げ続ける地元刑事の二人。一方、ソウルから来た刑事は冷静に状況と証拠を検証することで、地元刑事から暴行されている容疑者が犯人ではないと判断し、釈放するという繰り返しになります。

地元刑事の無謀で安易な誤認逮捕にイラつくほか、建物や街並、身なりなどが全体的に古く小汚い感じで、曇天の天気も相まって見ていて陰鬱な気分に。しかしながら、テンポや画面展開、カメラワークの良さでダレることなく引き込まれていきます。

やがて見えてくる、事件の起きた日の意外な共通点。それは、雨の日であることと、被害者女性の赤い服。そして、事件の日にいつもラジオにリクエストが届いていたという曲。

その曲をリクエストをしていた男が、犯人だとにらむ3人。

殺された女性たちと同じ手口で拘束されながらも助かった女性(犯人の顔は見ていない)の供述と一致する身体的特徴もあることから、刑事たちはこの男こそ犯人だと確信します。

しかし物的証拠がない。ようやくDNA鑑定材料となるわずかな遺留物を確保するも、当時の韓国では鑑定できる機関がない。焦りと苛立ちの中、アメリカへ検体を送り、判定を待つことになる刑事たち。

ずっと勾留もできず、結果待ちの期間に釈放される容疑者。見張りを続けるも、アクシデントによって見失ってしまう空白の時間が生じてしまいます。

そしてまた起きてしまった殺人事件。

ずっと冷静だったはずのソウルから来た刑事テユン。しかし、自分が以前話をした女子高生が被害者となって無残に殺され、ついに怒りで我を忘れます。真犯人だと確信する男を殴り続け、「お前が殺したと言え!全部吐け!」と銃を向ける事態に。

そこへ、止めに入るパク・トゥマン(ソン・ガンホ)。以前の感情任せだったパクと、冷静だったテユンの人格が逆転してゆく描写が見事です。

そして待ち焦がれたDNA検査の封筒が届く。

結果は・・・「一致せず」。

自国でDNA検査ができなかったような時代です。検体となる証拠収集も万全とは言えなかったと思いますし、何らかの行き違いがあった可能性もある。でも、検査で一致しなかった以上、それを証拠として逮捕することができない悔しさ。

必死で犯人を追ってきた刑事たちの、最後の希望が崩れる絶望感。

検査結果により逮捕できず、容疑者の男がトンネルへ去っていく場面。奥にゆくほど徐々に暗くなるトンネルで、ついに闇の中へふっと男の姿が消えます。それはまさに、真実が闇の中へ永遠に葬られたことを象徴するようなシーンでした。

それから十数年。

パク・トゥマン(ソン・ガンホ)は刑事を辞め、ビジネスマンになっています。結婚し、子供を持つ父親となったパク。たまたま訪れた以前の田舎町で、昔、女性の遺体が見かった場所に寄り、水路を覗き込むパク。

「何があるの?」とその様子を不思議がる、通りすがりの小学生の女の子。

その女の子が続けて言った言葉で、衝撃を受けるパク。そして、それは見ている私達も同じ。未解決事件という言葉の意味と重みが、改めてざわざわと胸に迫ってきます。

このラストは上手いです。

ネタバレありとタイトルに書きましたが、この衝撃だけは実際に見て受けてください。余韻という名の後味悪さをおすそ分けしたいので。

胸クソ教訓:
 忘れずに用心せよ
 捕まることなく
 普通の顔で暮らしてる
 殺人鬼がいることを

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