我が家系の男性はタイムトラベル能力を持つ、と父から聞かされた青年ティム。失敗を取り返すために何度も過去へ戻って人生をやり直すが・・・。
過ぎてゆく時間を生きることについて普遍的な価値を見い出す結末ではあるものの、それまでの行動が自己中過ぎて共感が飛んでいく作品。(2013年)
おすすめ度★★
あらすじ
自分に自信がなく恋人のいないティム(ドーナル・グリーソン)は21歳の誕生日に、父親(ビル・ナイ)から一家の男たちにはタイムトラベル能力があることを告げられる。恋人を得るため張り切ってタイムトラベルを繰り返すティムは、やがて魅力的な女性メアリー(レイチェル・マクアダムス)と恋をする。しかしタイムトラベルによって生じたアクシデントにより、そもそもメアリーと出会っていなかったということになってしまい……。
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人間、生きていれば「あの時こうしてれば・・・」「あの時あんなことがなかったら・・・」と誰でも一度は後悔したことがあるはず。
そして「もう一回あの場面に戻って人生をやり直したい!」と、もだえたりするものです。
これが、記憶ごと消えてその時に戻ればおそらく同じことをやらかしてしまうでしょうが、記憶を持ったまま戻れるなら、失敗を避けられる。
「自分が戻りたい時点に戻って人生をやり直せる能力がある」と、父から教えられた青年ティム。
女性の扱いが下手で、自信がないというティムなのだけど・・・
ちょっと待て。
ティムはそもそも、かなり恵まれたハイスペックな身の上ではないのか??
海辺の豪邸に住むティム一家。
大学教員を50歳で早期退職し読書三昧の父親、お茶好きな母親、はじけてる妹、金持ちの叔父さんと一緒に住み、毎日浜辺でピクニックしたり父親と卓球したりと、優雅な暮らしぶり。
妹の彼氏のいとこだという女性が夏のバカンスで2ヶ月も滞在するのを受け入れたり、大晦日は数十人の客人とともにお屋敷の自宅で派手な年越しパーティーが慣例であったりと、完全に富裕層らしい余裕がある生活なわけです。
実家を出て、ロンドンの法律事務所で弁護士として働き始めるティム。
何不自由なく育ち、弁護士として都会で暮らしながら、恋愛における出逢いのミスとかを挽回するため何度も繰り返し過去へ戻ってやりなおす。
これ、ただの贅沢野郎なのでは…?
タイムリープする理由がもっと重大なものならともかく、恋愛で無理やり出逢いを画策したり、繰り返したタイムリープのせいでその後の現実が変わってしまったことを補正するためとか、安易に過去に戻りすぎ。
これが、生死が懸かった事象を回避するとか、どん底の人生から起死回生を目指すとかならまだ共感できるんですが。
若手弁護士でロンドン住まい。
実家は豪邸&富裕層。
ベースがこれだけ恵まれた人生なのに、ささいなことでいちいち過去に戻ってやり直すな!
妹は「一家で私だけ落ちこぼれ」みたいなことを言い、ダメ男とばかり付き合ってティムを心配させるのだけど、それって一家が知的階級の富裕層であることの裏返しのようなもの。
ティムは好きになったメアリーと付き合うため、タイムリープを何度も重ねます。彼女が他の男と付き合っていたときは、その男との出逢い前の時間まで戻って妨害し、自分が横取りするティム。
出逢いを演出したり同じ趣味を装ったりして、上手くいかなかった部分の補正を繰り返し、恋人になり結婚に至るのです。
そして、そういった画策によってメアリーと付き合うことになった経緯を、彼は結局最後まで隠したまま。
まあ彼女のほうも出会いの成り行きですぐいろんな男と付き合うような軽さがあるので何とも言えないのだけど、自分に都合良い展開にするために何度もタイムリープをするティムに、どうも共感できない。
ティムは「もう過去には戻らない、今をせいいっぱい生きよう、すばらしい日々をかみしめよう」…という心境に至るわけですが、いや、さんざん戻り尽くして自分の望むものすべてを手に入れてから言われてもね…。
不幸な境遇にいる人が、リッチになりさえすればとバラ色の人生を夢見てタイムリープに奔走したけれど、本当の幸せはそういうことではなかった…という展開なら納得も出来るんですが。
そして、過去には戻れるけど未来には行けないというこの能力。子供が生まれたあとに、出産前の時間まで戻ってしまうと、生まれたはずの子が別の子供に変わってしまうという。
だから3番目の子供が生まれる前に、死を前にした父親と一緒に自分が子供の頃へ戻って、父と少年ティムは砂浜でたわむれて時を過ごす。
・・・・・ん???
おかしくないん???
3番目の子は確かにまだ生まれてないけど、1・2番目の子はもう生まれてるわけです。それなのに自分が少年の頃まで戻っちゃったら、またそこからの人生すべてやり直しで、子供を含めいろいろ変わってしまうのでは?
メアリーとの出逢いから結婚だって、もう一度やり直さないと違う未来になってしまうはず。
未来には行けないはずなのに、少年に戻って父親と過ごしたあとのシーンで、現在のティムが元と同じ生活してるのは変じゃないの?
最後の「幸せかどうかは自分の感じ方次第」みたいな、ハートウォーミングな日常シーンとナレーションにうっかり騙されそう。
そのメッセージ自体は間違いじゃないと思いますが、出自の恵まれ度合いはもちろん、その後の人生もやり直し能力で都合よく操作してすべての幸せを手に入れた人から言われても、完全に
「お前が言うな」です。
そんなこんなでいろいろモヤつくけれど、メアリー役のレイチェル・マクアダムスがかわいいので、おすすめ度は★2つで。
ちなみに、「過去に戻れるよ」と言われても、私は少なくても子供に戻りたいとは決して思わないです。
子供って、保護されてるかわりに自由がないもんね。お酒も飲めないし。
大体、大人の生活を経験して今の記憶を持ったまま小学生や中学生に戻ったとして、一日中何時間も学校で授業を受けて過ごすなんて、きっと耐えられないと思う。大人になって、自分が学びたくてする勉強とは違うしね。
受験とか就職試験とか病気とか、やっと乗り越えたしんどいことがいっぱいあるのに、あれをもう一回やるの? ・・・無理。
それに、現代の生活してる人が携帯もネットもない時代に戻ったら、その不便さだけで発狂しそう。
でも、もし本当に戻れるなら……
3.11、東北大震災の前に戻りたい。
そして、たとえ信じてもらえなくても巨大地震が来ることを伝えて、津波からの避難遅れと原発事故を防ぎたい。
誰も信じてくれなくて、「悪質なデマ流すな」と非難されてもいい。
「あとで嘘だったって笑ってもいいから、お願いだからその日には家を離れて高台へ行って」って、せめて叔父夫婦へ言いたい。そしたら津波で死なずに済んだのにって、どうしようもないことをぐるぐると何度考えたろう。
そして、今でも時々考えてしまう。
事故や災害で突然、大切な人を失ったことがある人ならきっと全員が「あんなことが起きるとわかっていたなら・・・」という苦しい思いを繰り返す。
タイムリープに関することに触れると、必ずそんなとりとめもないことを思ってしまうのでした。
あたりまえ教訓:
唯一無二の"今”を生きろ