スポンサーリンク

「さざなみ」~この妻の絶望感が理解できない男は、熟年離婚予備軍ですよ

うちの夫婦は、まあ上手くいってるほうだと思う・・・なんて、甘い考えかもしれませんよ? ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞作品。(2015年)
おすすめ度★★★

 

あらすじ

結婚45周年を記念したパーティーを土曜に予定しているジェフ(トム・コートネイ)とケイト(シャーロット・ランプリング)の夫婦。だが、月曜に届いた手紙がきっかけとなって、山岳事故で命を落としたジェフの昔の恋人の存在が二人の間に浮き上がってくる。かつての恋人との記憶をよみがえらせてはそれに浸るジェフと、すでにこの世にはいない彼女に嫉妬を募らせていくケイト。次第に彼女はジェフに対する不信感を抱くようになり、長い夫婦生活で育んできた愛情や絆も揺るぎ始める。

シネマトゥデイより

老年の夫婦、妻ケイトと夫ジェフの結婚45周年記念パーティー予定日前1週間の物語。

夫ジェフはケイトと結婚する前、恋人カチャを雪山で亡くしていた。その恋人が発見されたという通知が届く。

氷に閉ざされ、50年前の若い姿のままでよみがえった遺体。それは、妻が知らなかったジェフの想いと、フタをしてきた二人のズレや亀裂をあらわにしてゆく。

病身なのにそわそわと雪山行きを計画したり、こっそり屋根裏にこもり、隠していた恋人の昔の写真を見て思い出に浸り始める夫。

「彼女が生きていたら結婚していた?」と尋ねるケイトに、「そのつもりだった」と、夫は躊躇なく答える。

「僕のカチャ」などとも口にする。この無神経ぶりに、ある種の(もしくは多くの)男は、妻に与えるダメージの大きさに気づかない。

50年前に死んだ元恋人に嫉妬するほうがどうかしてるんじゃないの・・・と思うかもしれない。でも、これは嫉妬なんてかわいい感情とは違うのですよ。

もちろん、老年にさしかかる自分は、若いまま永遠に年をとらない元恋人にかなわないという思いもあるでしょう。でもケイトが一番つらいのは、そんなことじゃない。

「現在」生じた問題なら、対処や解決を図ることも可能だと思う。でも、「過去」からやってくる衝撃は、どうすればいいのか。

時間をさかのぼって選択をやり直すことは、二度とできない。

結婚してからの自分の45年間は一体何だったのかという思いを一度抱いたとき、それを払拭する術(すべ)が、ケイトには何もない。

子供や孫に囲まれていたら、夫への失望にも耐性を持てたかもしれない。

子供を持てなかった自分に、屋根裏に隠された元恋人の写真が投げつける衝撃。

夫が一番愛していたのはカチャという女だったと、45年という長い間知らずに過ごしてきた。

ただ、その45年間が、愛されている実感と幸せに満ちていたものなら、ケイトはここまで気持ちが揺らがなかったと思う。

結婚45周年記念パーティーの準備や打ち合わせをしているのは、ケイト一人だ。ジェフとの日常の会話や、ケイトの友人との会話、いろんな言葉の端々から、不満や我慢を重ねてきた45年だったとわかる。

それでも、夫婦としてやってきた。積み重ねてきたはずの絆が、45年という長い時間で出来上がったはずの何かが、根底から崩れていく絶望感。

大中小さまざまな傷や不満には目をつむりながら、あとは穏やかに、支え合って老年期を過ごすはずだったのに。

さらに悲しいのは、完全に崩壊した自分の気持ちを自覚しても、新たに人生をやり直す時間も気力も、ケイトには残されていない。

結婚45周年パーティーで、夫は涙ぐんで妻への感謝を口にするが、もはや粉々になり、冷え切ったケイトの心は元に戻ることはない。

大きな斧を振り下ろされたかのような亀裂が生じた妻の心を、夫は真に理解はできていない。

イギリスらしい曇天と郊外の美しい風景、登場人物は中高年ばかり。

会話のほとんどは淡々として、一見大きな起伏もない。人によっては退屈な映画にしか見えないかもしれない。

でもケイトの心情を理解できる人にとっては、「さざなみ」なんてレベルではない大波に襲われると思う。

幸せいっぱいの恋愛中の若い方ならともかく、配偶者がいる中年期以降の人でケイトの絶望感がピンとこないという男性は、普段なにかやらかしてる可能性大です。

熟年離婚or老年離婚されないよう、十分お気をつけられることをおすすめします。

共同生活教訓:
 長年押さえこんだ不満の地雷を踏むな
 ささいに思える言動で大爆発するよ 

おうちでシネマ。
映画・ドラマ・アニメ・バラエティ
定額見放題「Hulu」
 
2週間無料トライアル
         
↓↓↓↓↓

Pocket

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする